コラール・プレリュード 


草の枯れはじめた湿地の入口
古い洋館は
泥濘に囲まれ
霧雨が降り続いていた

或る孤独な家族の運命が
雨のスクリーンに映る
口を開けて木漏れ日を浴びる
モノクロームの少女

それは彼女なのだろうか
洋館の盲いた窓には
星のない宇宙がひろがり
かすかな祈りが聞こえる

わたしは黒い傘の下
目覚めようとする死児のように
身じろぎ
過去にも未来にも通じない
雨の扉に手をかけた