軌跡


ひとつの滅びやすい身体が
夕の光を浴びている
娘の手を引き
スーパーの入口に消えていく、その
一瞬の軌跡が
傷痕のように
夜になっても消えない

届かない夢と憎しみを
何度すり替えても抜け落ちる何か
叫びのように突き上げる光に
あなたの横顔が薄く目を閉じる

遠ざかる列車の轟音
今夜もまた
(二度と来ない今夜を)
「幸福」という言葉を
錆びついた唇に浮かべ
わたしは眠る