なぜ彼が
何度も呼びかける
君 という言葉に
彼の姿だけしか
見えないのか
いや
彼の姿すら
見えないのか
ずっと
不思議だった

拒否された世界に佇む
枯木のような影
見捨てられて
ダンボールに寄り添う子猫たちの
かぼそい声

だから
何度も飛ぼうとして
爪先立ち
君 とあてもなく
叫ぶしかなかった

拒否された世界のなかで
彼が拒否した光のなかに
君 の淋しい顔が浮かび上がる