家族旅行


洗われた葡萄のなかに
まじっている枯葉は鮮やかな赤
静かな家族旅行
通り過ぎた峠の楓が
夕陽に赤く映えていた
ことさらに醒めることもできず
不器用に分かち合った喜びと悲しみ
すれちがいより恐ろしいのは
谷底からのぼる闇の冷気
テーブルから
一粒の葡萄がころがり落ちる
ただ
そのように
運命は動きだしていた