ひとつの祈りを


ひとつの祈りを
生きるのではなく
ただほろぼすために
これだけの時を
賭けてきたのか

暗雲の走る空に伸び
途切れている坂道
揺れる幼年の草
いたわりの指先で
織りあげてきた悲しみに
ひとつの愛を告げられ
鏡よ
もうわたしには
砂漠すらいらない

飛散した時を結び
またはじまる物語り
ひとつの祈り
美しい秋の午後に
写真の灰に埋もれ
見上げる蒼穹から
耐え難いほど透明な光・・・

いつのまにか
胸の上に眠る子猫は
ただ
ひそかに
未生の寝息を繰り返す