停留所で
点在する残雪の向こうの
灰色の海
昨夜の橋上で見た
彼女の瞳に似ている
遠大な夢も約束もいらない
ただ、ここにいさせてください
その途切れがちな声
追放されるうちに
追放そのものが住処になったユダヤ人のように
つかの間の繋留地にいたのだろうか
(常に腕を振り上げた姿で浮かぶ父親
ヒステリーさえ起せず座り込んだままの母親)
遠くへ
何よりも過去より遠くへ
遠大な夢も約束もいらない、
ただ、ここにいてください
わたしのかすれがちな声は
彼女に届いたのだろうか
バスが着くまで
あと15分
ひろがる灰色の海の声につつまれ
永遠より長い時間だ