友愛


光に穿たれた目を
空洞のまま空に上げる
舌には砂漠の味
首都高に似た曲線が
ネガのように残る

住まうという響きの美しさの影で
追い出されていく背中
ハイデガーの総長演説
その高揚した言葉の何処に
「存在の住処」があったのだろう
逆説とトートロジーの森から出ると
小道の消える野原の上には
何処までも灰色の空がひろがっていた

高速の手摺を右手でなぞり
きみがぼんやりとふりかえる
きみとぼくを
つなぐ糸も
分かつ刃も見えなくなった
あの雲のように
空の端で渦巻く記憶と
その底の暗さだけを
身体のどこかで鈍く感じている

右手で手摺をなぞり
盲目の人のように
きみは静かに遠ざかる
どうか、きみが
ぼくを殺しにくる日が来ますように
そして、ぼくと
刺し違える瞬間が来ますように