3月27日 夜明け前


午前4時
つかまえることの出来る
最後のハイヤーを前にして
彼女の消えた路地を
見つめ続けた

雪の消えかけた街は
まだ凍てついたままの時間のなか
物語はまだ続いているのか
すでに終わってしまったのか
遠くに消えるテールランプの
鮮やかな赤

薄暗い光のなかの
灰色の乳房から
春を孕んだまぶしすぎる光へ
彼女の命が
そのように燃え上がるなら
諦めも悪くない、と
胸のなかで呟いた

わたしの命が
そのように消えていくなら
それを夢だとは言うまい
そうもう一度
呟いた