古い住宅地に
夏の光が照りつける

あれは、子供の産まれた家
あれは、主婦が首を吊った家
あれは、誰もいない家

家もまた子供を産み
首を吊る
薄汚れた台所の窓から
初老の女が路地を見つめ
疲れた生殖器が
かすかにふるえる

夫が家の顔をつくり
妻が化粧を施し
閉ざされた夢をつなぎながら
やがて子供に捨てられる

さび付いた食器を
通りすがりの浮浪者が拾い上げ
誰もいない窓を振り返る

強いられ
強いてきた生命が
ただひとりになった時に残る
一掴みの骨片

あれは、誰もいない家

「自然」という
色あせた表札に
封をされて