薄明


浅瀬に踏み入る裸足が
薄明の冷気を
青黒い川にひろげる
彼岸の暗い茂みの奥に
ひっそりと揺れる赤い花
男の唇の奥に樹が茂り
蜜が流れる
凍った吐息との別れ
川底に白い少女がめざめ
まっさおな器の冷たい響きが
遠くの村から聞こえてくる時刻
無言のよろこびと
沈黙の水晶が
巨大な寺院を築き上げ
消えかかる夜を弔う