幽音 −秋の転移−



水が水に燃え移る夏
国道の長い曲線の向こうに
雲が静かに消えていった

雨が雨に乗り移る秋
古い自転車にからまる枯れた蔦
鳥はやはり鳥のかたちで飛び去り
枝にはいくつかの空虚が残るのだろうか

見ていたもの
古いバス停の標識
雨の痕跡が降る窓
きみがきみに乗り移り
わたしの声と
かすかな骨の軋みが
交差した小道で残響のように鳴った

蝋燭の匂いを連れて
透明なバスが通りすぎた後
音でできたような一つのかたちが
祈りの闇を
白く傷つけながら通ってきた
境界線もなく
わたしの声と混ざり合うような
近さ、で