ただ、それだけを


雨の その かすかな乱れ
微小の細菌の 繁殖する夏
何を祈る?
消えていくこと ただ、それだけを

あの子は 微笑んでいただろうか?
あぜ道に座り 捨てられたホースを玩び
横顔に 乱れる光

わからない それが幸福だと気づくとき
すでに 終わってしまっているから
切れた時間の 深い谷に
何を投げ入れても 戻ってくることはない
あの濡れた土 そのなかに
溶けた瞳が 空を見上げている

(雨の向こうに 小さな影)

今 何か声が・・・

何も聞こえない

(あれは ぼくの影
もう 振り向かない)

何を叫べばいい?

祈りにならない かすれ声
ただ、
それだけを