秋のオード


冷え切った唇に青空が映る
そこから降りしきる落ち葉
川沿いの小道を
影だけが通り過ぎる
鉄を打つ音が遠く響き
河原の白い石がまろやかに濡れている

光が前よりも暗くなったの
そう呟いた彼女の前で
何も変わらない空を見上げた午前
古い石塀が何処までも続く道を
乳母車を押す若い母親が
ゆらゆらと遠ざかっていった

その夜
枯葉に覆われた沼を
古い街灯だけが照らしていた
あなたと行くことはできない
その言葉を半ば信じないように
苦しげに微笑んだあと
それじゃ、また
そう呟いて遠ざかる後ろ姿を
ただ、見つめつづけた

夜明け
青黒い霧がたちこめて
時を告げる鐘が鳴り響く
道の上に佇む人影
そこから黒々と鳥たちが舞い上がる
鉛色の硝子の向こう
太陽のようにのぼる贖罪の歳月よ
・・・待っていたんだ
人影はぼんやりと振り返る
そして
まるで傷口が閉じるように
薄れていってしまうのだ