声
丘の稜線が仄かに明るみはじめた
雪と雪の間に
境界のように佇む白のように
誰かが隣にいる
その息の白さ
いや
その遠さにも似ている
古い画像の
灰と黒の森から
押し殺されたわけでもなく
ただ忘れ去られた声が
ひとすじの道を描く
あの丘へと
上っていく
物語が
終わったというその時に
すでにはじまっているもの
赤い髪飾りの揺れる海
指でふれたときには
すでに終わっているもの
それなのに
終わらせることができないもの
稜線は
白く、白く
きみの細いうなじ
別の誰かとまじりあいながら
それゆえに
まじりあうことのできない
声
もう一度
きみを殺しにいこう