夜のはじまり


無数の糸に
からまれながら遠く
爛れたような夕日を見ていた
彼はそこから来て
わたしを愛して
そこに帰っていった

秋の終わり
どうしても?
雑貨屋の壁の前
庇に垂れる蜘蛛の糸の下で
彼は頷き
細い足を伸ばして
自転車に乗った
軽やかに
時々ふらつきながら
橋をこえて
丘をこえて
夕日に燃える
一本の大樹のあたりで
見えなくなった