花火


旭川だったのか
それとも別の町だったのか
木造の古いアーケードを歩いていた
鈍い照明の下に
雑然と置かれた品々
塗料のはげた丸椅子に座り
老人が目を閉じている
すれちがう人々は影絵のように暗く
静けさとざわめきが
不思議に溶け合っていた

アーケードを抜けると
丈の高い雑草に覆われた空き地
向こうの木の柵と黒い屋根の上には
巨大な花火が広がっていた
口を空けて
見上げるわたしの幼い肩に
ひっそりと置かれた指先

(キレイネ)
(不思議ダ
イツカモコンナフウニ
花火ヲ見テイタヨウナ気ガスル)
(私タチガ生キテイタ頃ニ?)
(ソウカモシレナイ)

見上げる瞳に
最後の花火が広がり
静かに闇に消えていった