紫の雨


紫の雨
緑のなかのライラックが
静かに燃えている

君に語りかける
咽喉の奥に
ちいさな光が灯る
声が二重に響くようだ

夜が来たら
座礁した箱舟のような
あの廃屋で眠ろう
夢の道には
まだ紫の雨が降り
見えない月が
青く燃えているだろう

君の沈黙
水のように溶ける瞳が
世界にひろがる
降りしきるひそかな鼓動

けむる林への道
咽喉の奥の光を
松明のように掲げて
歩み去る君の姿が
遠いまぼろしのように
浮かびあがる