これも言葉


言葉はいつも裏切るだろうか
言い尽くせない何かを
あなたとわたしは
一度でも持ったことがあるだろうか

愛する、という
単純な言葉ですら
唇をふるわせるためには
無数の条件を超えなければならない
この言葉が重いからではなく
ひとつの権力だから

口ごもることで
累積される意味のざわめき
静かな橋上から
ただ光は染みとおり
何かを叫ぶ前に
沈黙が支配している
純粋をつくりだすための
終わりのない儀式のように

不意にあなたは立ち止まる
夕の光が薄れ
星々のめざめるこの街
あなたが生活と呼び
夢だと叫んだすべての日々が
目じりの皺で
また意味を見出そうとしている

それでもわたしは明日を知らない
これも言葉
くるおしい沈黙の叫びを
すべての喜びと悲しみをこめて
あなたに

・・・これも、言葉