飛翔


曇り空の午後
古い工場の煙突が
荒れ野の向こうに煙をあげる
石狩川は蛇行しながら
地平の果てに流れていった

草木に覆われた廃線
その枕木に腰掛け
語り続ける彼の低い声
星のざわめきのように流れ
意味の器からあふれでる言葉
彼が幸福なのか不幸なのか
明日に何を求めているのか
わたしには
わからなくなっていた

或る美しい夕暮れ
夏の終わりの空気のなか
水田の排水沿いに
両手をひろげて走る彼を見た
鳥なのか飛行機なのか
すれ違うひとの軽蔑も届かない軽やかさで
神社の方に走りながら
笑顔で振り返る

・・・一緒二飛バナイカ?

ああ、
一緒に飛ぼう