薄明


灰緑色の沼に
雨の無数の波紋
薄暗い林に
一本の白樺だけが
鮮やかに佇んでいる

あの夜が下降ならば
枯れ木の梯子を踏み外し
自らを埋めるだけでよかった
しかし漆黒だけが
照らし出す傷口がある
生と死をすりかえるには
あまりにも深い痛苦を
子供の口のようにひろげて

沼を横切る灰色の水鳥
ひとつの時間が
その羽に引き裂かれ
白樺をこえて
暗い薄明を飛び去っていく
濡れたぼろの隙間から
わたしはただ
それを見上げていた・・・

子供のように口を開いて