雨が降っている

いつのまに?
そう思った時には
あなたを忘れられなくなっていた

擦り切れたレコードのように
そんな比喩すら古びてしまった
この痛み
ふるえる指先

ひとつの戯画になるだけ
雨の亡霊に憑かれながら
ひび割れた舗道の子供の落書きが
洗い流されるのを
ただ、見つめていた

何を占おう
幸福と不幸をすりかえる
金貨を握りしめて

衰えていく体を病室に横たえ
あなたは終わりにふさわしい恋が
訪れる夜明けを夢みている
わたしのことなど忘れているかのように

雨が降っている

ただひとりであり
何番目でしかない男が
金貨を投げ上げる
薄暗い床をころがる間
運命が迷うふりをする

あなたがひとりで死に
わたしがひとりになる夜明けまで