3 香田さんの死(2004/10/31)


 ボランティア等明確な目的もなく恐らく好奇心でイラクに入ってしまったことがこのような悲惨な結果になってしまったのだからまさしく「自己責任」なのだろうが、無念で仕方ない。ご冥福をお祈りします。

 ナチスドイツの末期、電話等でヒトラーや現体制の批判をしたひとを過激分子が血祭りにあげたが、敗北と同時に彼らは雲隠れしてしまった。今のイラクはまったく状況が違う。旧体制の残存分子だけでなく、外国のイスラム系過激派が国内に流入して、活発な反米(反暫定政府)活動をしているのだから。アメリカが何と言おうと内戦状態なのは間違いない。

 逆に見るとナチスドイツや大日本帝国が敗北した時に内戦やテロがほとんどなかったことが不思議な気がする。やはり第二次世界大戦は国家の戦争であり、歴史の浅い理念の闘争だったから、求心力が持続しなかったのだろう。しかし宗教(イスラム教)は国家の枠を超えたもので、一国家の一体制が崩壊したとしても様々な利害や理念が求心力を持つということなのかもしれない。

 イスラム教の大半の信徒は過激分子と何の関係もないし対照的な存在だと思う。しかし現存する世界宗教のなかでこれほど政治的な力と直結した宗教がないのも事実だ。それはイスラム教が特異だからというより、聖地であるアラブが世界最大の原油産地であり、戦争やメジャーの支配、イスラエルとの対立など二十世紀のきな臭い問題が集中している場所だからだろう。

 「異教徒はイスラムの地にいらない」という憎悪は、どんな宗教にもある単なる排他主義ではなく、石油権益で蹂躙されてきたアラブの歴史と結びついている。今のイラクの現状は「宗教戦争」であり「石油戦争」でもあるのだ。

 ほとんど無宗教で平和に暮らしているわたしたち日本人には想像を絶する世界がそこにある。そんな場所に無防備で入ってしまった一人の青年の死。それでも彼の恐怖と無念を「自己責任」で片付けるのはむごすぎると思う。論外なのは無関係な家族にいやがらせの電話をかける連中や、相変わらず「血税」の論理を振り回す連中だ。外国で犯罪を犯した日本人にも税金は使われる。国家が外国にいる国民を保護するのは当たり前だろう。


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