9 スノビズム(2003/11/28)


 スノビズムとは「教養をひけらかす俗物根性」だと辞書には出ている。それは本来は階級的なものだと思う。いわゆるブルジョアジーの在り方と密接に関わっているし、そこにしか存在しない在り方だろう。

 しかし或る意味皆がブルジョワになってしまった戦後の民主主義国家では(イギリスやフランスは今でも階級社会かもしれないが)、特に日本では、スノビズムとは「オタク」とほぼ同義になっていると思う。

 その対象がロリコンアニメであれ、ハイデガーやフランスの哲学であれ、在り方は酷似している。好き嫌いと情報の量や質、その情報を得るパイプ・・・或る枠のなかでその差異を個人やグループ単位で競っているわけだから。誤解しないでほしいが、詩や小説を「創作」することが、そのようなスノビズムを超えているわけではない。逆に枠を超えるかのように自他を錯覚させてスノビズムを再生産していることが多いのではないだろうか。

 しかしスノビズムはひとつの快楽であるし、多かれ少なかれ誰にもある。ひとの楽しみを抑圧する必要などない。
 ただし、スノビズムに耽っているだけなのに(或いはそれ故に)、まるでその外にいるかのように自他を抑圧するシステムは肯けない。それは「文学」とか「思想」の名で機能している。実体としては存在しない階級への「出世」ゲームとして。