もう昨日になるが、午後11時半頃気味の悪い出来事があった。
友人宅からの帰り道、閑散とした市道を車で走っていたら、点滅信号機のある交差点で誰かが手を振っている。(警察か?)飲んではいないもののぎょっとして車を停めると、60代ぐらいのおじさんだった。小太りで、調理場の白衣の上にジャンパーをはおっていた。
「どうかしたんですか?」
「すいません、深川は何処でしょうか?」
「ここは深川ですけど」
「いえいえ、深川の市街地のことです」
彼の後ろには自転車が停めてあった。辺りは水田ばかりで私の来た方には市街地の明かりが見えている。このひとは何を言っているのか?
「いや〜そんなに飲んでいないんですが急に自分が変になっちゃって、何処にいるのかわからなくなったんです。何か心霊的なものにやられた感じなんです」
冗談を言っている風ではなく、表情には恐怖の痕跡が浮かんでいた。
「そうですか。とにかく気をつけて帰ってくださいね。あちらが市街です」
「ありがとうございます。いや〜本当にこんなことはじめてです」
再び車を走らせながら、彼のことを考えた。脳に疾患を抱えているのか、不安神経症かある種の精神疾患の持ち主なのか。何処かの店で調理をしているような風体だったが、そもそも何故自転車で夜中にこんなところにいるのか。彼の来たらしい方角には確かに精神病院があるが、患者のような姿ではないので、たぶん知人のところからの帰りなのだろうが・・・心霊現象か・・・ん?
わたしはその交差点が事故が多発した場所であることを思い出した。覚えているだけで3人ぐらい亡くなっている。そして彼のきた方向を少し行くと踏み切りがあり、10年ぐらい前に若い女性が車で列車に突っ込んで亡くなっている。噂はあまり聞かないが心霊スポットになってもおかしくないような場所なのだ。
あくまで推測だが、酔いか何か精神を不安定にすることがあって(或いは両者)ほとんど往来のない道を走るうちにここが事故の名所であることを想起して、心霊的なものに精神がシンクロしたのではないのだろうか。
普通に歩いていたからたぶん無事に帰ったと思うのだが。心霊など信じないわたしだが、非常に気味の悪い出来事だった。