1 いつか見た夢「白い建造物」 (2003/8/1)


 深夜、家の近くの林のなかに白い建造物を見つけた。細長い灯台に似た建物だ。中に入ると、何もない空間に螺旋階段が天上に続いていた。長い間誰も訪れなかったらしく、床には厚く埃が積もっている。わたしは上まで上ってみた。最上部にだけ白壁の小さな部屋があり、天窓に星の光りが瞬いていた。
 家に帰り父に建物のことを尋ねると、石油ショックの前の景気がいい時代に特に目的もなく建ててそのあと放置したものだという。わたしも幼い頃に入ったことがあるというが思い出せない。浮かれて作った意味のない建造物とあの内部の空虚に、わたしは過ぎ去って帰らない少年時を思った。