9 「鈴を返せ」 (2003/7/21)


 小学館の「小学〜年生」という月刊誌を愛読していた。「ドラえもん」の最初の連載も確か二年生ぐらいの時にはじまったと思う。1970年前後だろうか。「どこでもドア」が最初に登場した回も覚えている。
 「ドラえもん」は別にして、当時の子供向け雑誌にはこんなの読ませていいのかと思うような暗い漫画が、たまに載っていたような気がする。
 確か「小学一年生」に連載されていた「鈴を返せ」(だったと思う)という漫画を読んで、しばらく不安と悪夢に悩まされたことを鮮やかに覚えている。それはこんな内容だった。
 帽子をかぶった主人公の少年は、町で偶然交通事故を目撃する。一人の男性が死亡していて、あたりは野次馬でいっぱいになっていた。少年はその男性の遺留品らしい小さな鈴を拾って、何気なく持ち帰る。その日の深夜、少年は変な声に目を覚ます。部屋にある人形や水槽の金魚が「鈴をかえせ〜」と叫んでいる。少年は恐怖のあまり両親を起こすが、両親がいるとそんな現象は起きない。つぎの日から両親と一緒に寝るが、少年だけがその現象に目を覚ましてしまう。そんな夜が何日も続く・・・
 その後の展開は忘れてしまった。というよりも、怖くて続きを読めなくなったのだと思う。学校から家に帰ると誰もいないことが多く、水槽の金魚が喋りだしそうな気がして家に一人でいられなくなった。深夜に妹と二人きりで留守番していると、壁にかかった古い秤が喋りだす・・・そんな悪夢を見たこともある。
 今でもこの当時のことを鮮やかに思い出すことがある。