6 雨・記憶 (2003/7/10)


 強い東風も伴っていたが、午後に待望の雨が降り始めた。
 貯水池と用水からのポンプアップに頼る山間の水田があるのだが、ずっと少雨傾向のために地下水位が下がり、全然水が持たなかった。これで少し楽になる。
 基本的にわたしは雨が好きだ。状況次第ではありがたくない時も無論あるが、心も体も落ち着く感じがする。
 何年ぐらいになるだろう。物置小屋の屋根から滴る雨を見て、前もこんなふうに雨を見ていたと考えるようになったのは。必ず年に一度そんなことを考えて、われながらおかしくなる。全く同じ雨の光景を見ている錯覚と、二度と同じ雨は降らないという一回性を同時に考えてしまう。
 反復されているのは世界のなかにあり、世界を感受する「わたし」なのかもしれない。そして雨と同じように決して反復しえない「わたし」の痕跡をも感じている。それは、静かで落ち着いているが、かすかな悲しみを伴う感覚だ。