2 千恵っ子よされ(2002/7/25)



 平成三年の冬(だと思う)、「千恵っ子よされ」がほとんど唯一のヒット曲といっていい岸千恵子さんがディナーショウに来ました。その夜の部の悪夢のような体験・・・。

 ヒット曲が一つしかない歌手は一回のステージで四回その曲を歌うと聞いたことがあります。冒頭、中間、最後、そしてアンコール。その通りでした(笑)。それはいいです。よくあることです。しかしダレかけたステージに活を入れた中間の「千恵っ子よされ」の後、簡易着替え用の屏風に岸さんが入った時にその事件は起きました。

 すぐそばの喚起口が壊れ、外から雪が入ってくるとスタッフが伝えて来たのです。外は猛吹雪でした。

 特命を受けたぼくと若い社員は脚立を持って駆けつけました。ハンドルで開閉する喚起の扉が、ワイヤーが切れたらしく風でバタバタしています。
 「おれが押さえているから布テープ持ってきて!」ぼくは脚立にのぼり、扉を手で押さえました。下を見ると当時四十代半ばぐらいの岸さんのセクシー(?)な白い長襦袢姿が・・・。思わず目をそらすと、客席の何人かがこちらを指差して笑っています。ステージの左上に遮るものもない状態、そりゃおかしいでしょう。しかも、追い打ちをかけるように下から声が・・・。

 「おにいさん、たいへんだねぇ。」岸さんが派手な和服姿で微笑んでいます。「はぁ・・・。」声に力が入りません。しかもテープの在り処がわからず若い社員がなかなかもどらなかったため、ステージが再開しても約十分ぐらい、ぼくは扉を押さえ続けていました・・・・・・・