沖縄の話(3)

水族館の水槽 その他 / カマドメガの謎 / 内地という言葉



<水族館の水槽 その他> 2003年 12月20日(土)〜12月23日(火)  in 沖縄 

【その1】

今や、極端な、東京一極集中型社会の我が日本。
それでも、
「おらが村、おらが県が全国で一番じゃ!」というものは、色々とあるもので
例えば、
我が香川県では、協和化学工業という会社
この会社の作る、なんとかマグネシウムという無機化学物があるのだけれど
これが、国内のみならず、国外でもトップクラスのシェアを誇るという代物。
海水から作られるそれは
タイヤを作る時、ゴムに混ぜられる物質らしく、タイヤ作りには、無くてはならない物だそうだ。
<国内シェア、トップ>でも、充分すごいけれど
国外でも、というのが、またすごい。
4,5年前には、オランダに、でっかいピッカピカのヨーロッパ工場まで作ったこの会社。
その本社は、
なんと、我が屋島地区にあるのである。

屋島地区のはずれの
海沿いにある、その会社の古い工場は
はっきり言って、とてもじゃないけど、世界トップシェア企業のそれには見えない。
時々、
散歩で、その工場の前を通りかかる私は、ずっ〜〜〜〜〜と中小企業だと思っていた。
だから、夫から
<オランダの工場>だの<世界トップシェア>だのという言葉を聞かされて、仰天。
いや、人は見かけによらぬもの。
会社も、外見ではわからぬもの・・・と、つくづく思った次第だった。
・・・でも、仰天するのは、私だけじゃないんだろうな。
オランダから出張でやって来たビジネスマン&ウーマンも

「ようこそ!ヘッド・オフィスはここです。」

と言われて、思いっっきり引くんじゃなかろうか??
それほど、地味で質素で、古びて見える、
昔ながらの工場&事務所・・・じゃなかった、工場&本社なのだった。


さて、香川県の誇るNo.1企業と言えば、もうひとつ
日プラ(にっぷら)という会社がある。
略称じゃなくて、これがホンマの会社名。
多分、<日本プラスチック>の略から命名したのではないかと思うんだけれども・・・・・・・。

何を作っている会社かと言えば、アクリル樹脂で、でっかいアクリル板を作っている。

そのアクリル板が、何に使われるのかと言うと
ズバリ、<水族館の水槽>。
これです。
というか、会社のHPを調べてみたところ
水族館の水槽用のアクリル板しか作っていないのでは・・・?と思われるふしもある。

しかし、たかが水族館の水槽とおっしゃるなかれ。
かつて、神戸の須磨の水族館に登場して、皆の度肝を抜いた
あの、天井から床まで届くような
壁面いっぱいの巨大水槽、
あれこそ、日プラの商品なのだ。
その後、大阪の海遊館、
東京ディズニーランドのお隣の葛西臨海水族館など、
新設水族館に次々と取り入れられ、人気を博している巨大水槽。

あれらは、日プラの説明によると
大変な水圧に耐えるため
板の厚さが、50p〜60pもあるそうで
そういう厚さになって、なおかつ、ゆがまず、曇らず
まるで、目の前に魚たちがいるかのような、透明なアクリル板を作るというのは
世界に他に無い、すごい技術なのだとか。
確かに、
以前、水族館で見た、巨大水槽の中の魚たち
ホントにすぐそこで泳いでいるようで、とても50pの壁の存在なんて、感じられませんでしたっけ!

そして、ただまっすぐな板を作るだけではなく
曲面の水槽も、日プラは開発。
確か、10年くらい前だったと思うけれど、
東京の足立区に開館した水族館で
アーチ状の水槽を作り、客が、トンネルを通り抜けるようにして、水槽の下から泳ぐ魚を見る
という展示法を取り入れ、大変な話題になったことがあったけど
あの、アーチ状の水槽を可能にしたのも、日プラ。
いや、素晴らしい。
今や、水族館のアクリル水槽では、世界シェアの75%を占めているとか。
そんな企業が、香川県にあるなんて。     
                   (でも、あとの25%って、どこの企業だろう???)

さて、日プラのHPによれば
商品の納入先も、コスタリカやらサウジアラビアやら、スペインやらアメリカやら
ホントに世界各国。
もちろん、国内でも、数多くの都道府県にお客様がいるようだ。

その日プラが水槽を作った、国内で、今一番新しい水族館と言えば
沖縄<美ら海(ちゅらうみ)水族館>。



というわけで、前ふりが長くてすみません。
行って来ました。<美ら海水族館>へ!



那覇からレンタカーを走らせること、2時間。
たどり着いた水族館は、でかく、格好良く、そして、ものすごい人気で、大変なにぎわいで
人混みが苦手な私は、
黒山の人だかりを見ただけで、もう、へたり込みそうになったのだけれども
でも、
ヘナチョコ気分は吹っ飛んだ。



↑この水槽を見た瞬間に。

ブラボ〜〜♪日プラ!


美しい海に囲まれた沖縄に来て、わざわざ何故、水族館へ・・・・・
という意見もあるだろうけれど
熟練のダイバーでもなければ、ジンベイザメの泳ぐところなんて見られやしないし
マンタ(オニイトマキエイ)の、ゆうゆうたる泳ぎっぷりなんて、拝めやしない。
水槽に閉じこめられた魚たちは気の毒だ・・・
と、大人になった今は、やはり思わずにはいられないけれど
それでも、
こういうシーンには、
「うわわわ!うわわ!!」
と、思わず感動の声をあげずにはいられない。










頭上を行く、マンタやジンベイザメの腹は、やはり、何かとんでもないものを感じさせてくれる。
こういう生き物が住む地球の不思議とか、
人間以外の生き物への畏敬の念とか・・・。

水族館や動物園で生き物に出会って
動物学者になる人もいるだろうし
環境保護の研究者になる人間も出てくるだろうし
そう考えれば、
動物園や水族館にも、メリットはあるのかも。
そして、なにより
やっぱり子供は、動物園や水族館が大好きだ。(私も大好きだった!)
大人だって好きだ。
感動する。

その感動を、さらにでかくしてくれる日プラに、本日は感謝。

(というわけで、今後、どこかの水族館で巨大水槽を見かけましたらば、
それは、まず間違いなく日プラ製ですので、どうか香川県のことを思い出して下さいまし。皆さま。)




【その2】

さて、沖縄本島といえば、我々夫婦にとっては、じいちゃんの弟の慰霊。

昨年の夏の旅行では、台風の最中に慰霊を決行し、えらい目にあった私達。
                            
なにせ、風速40メートル。



↑これでしたからね。
(ああ、今でも、ドッシャーーン!!という波のくだける音と、モーーレツな風のうなり声が聞こえてきそうな・・・)

あの時は、<平和の礎>入り口前の花売りのオバァもおらず(当たり前だ)、
我々は手ぶらで
しかも、じいちゃんの弟の礎の前に、なんとかたどり着いたものの、拝んだ時間はわずか5秒。

「じゃ!!」

と、逃げるように・・・というか、逃げたんだけれど、なにせ風速40メートルだから。
でも、やっぱり5秒は失礼だったと思う。
次は、ちゃんと拝まねば
と、この一年と数ヶ月、気になっていた慰霊だったのだ。

今回は無事、花束も、線香もゲットでき、ゆっくりと拝めた私達。

帰りに見かけた公園内の木々は



↑このように植え替えられておりました。
(↓こっちは去年の姿)



頑張るんだよ!若木。





<カマドメガの謎> 2004年 1月6日(火)

名前は祈りである。
と、以前何かで読んだ。
デーヴィットやマイケル、マルコやフランチェスコ、ムハマンドにハッサンが続出する
ヨーロッパ諸国やアラブの国々でも
生まれた子供が健やかに育つように、と、祈りを込めて、両親は名前を付けるのに違いない。
いわんや、
表意文字を持つ日本では。
近年多い、<愛><勇気><大輝>・・・
皆、ご両親の愛情と祈りが、名前から溢れる出るようではありませんか。

では、この名前は?

カマドメガ。

そう、沖縄の年配の女性の名前で、
この2年間に渡り私を悩ませ続けている、
この、キョ〜〜レツなインパクトを持つ名前に込められた、家族の祈りとは、いったい???????





去る12月22日。
私は、首里城にほど近い、沖縄県立博物館にいた。
正確に言うと、博物館の門前にいた。

2年前の冬、沖縄旅行中に読んだ地元新聞<沖縄タイムス>の訃報広告のページ
     (訃報欄ではない。他府県の新聞でいうと
      企業などが社主の死去の際、新聞の下の方に出す訃報の広告。
      あれが、沖縄の地元紙には丸々1ページあるのだ。もちろん、毎日。
      それも企業ではなく、ごくごく一般の家庭が、広告を打つのである。)
その広告のページにあった、ある亡くなられたオバァの名前
<◎◎カマドメガ>。
これに衝撃を受け
どーしても<メガ>の意味が知りたくてたまらなくなった、私。
カマドは、もちろん、あのカマドだろうけれど、メガとはいったい?????

その後、ネットで検索してみたけれども、わからず
昨年、那覇で
沖縄生まれ沖縄育ちとおぼしき、中年のタクシー運転手さんに尋ねてみたものの

「そんな名前、初めて聞いた」

と言われ、「ウソ・・・・・」と思い
もうこうなったら、博物館の学芸員に聞く!!
と、満を持してやって来た県立博物館だったのだ。

ところがあなた
博物館は、
年末年始の休館期間に入っていたではありませんか!


何故にそこまでして、私に意味を知られたくないのか、カマドメガ。
いや、メガよ。

・・・でも、もうこれ以上問題の先送りに耐えられなかった私は
旅行後、
県立博物館のHPから、メールで問い合わせた。
What’s mean???MEGA?????



昨日、ついに博物館から、その答えが返ってきたのだ。
(あああ、もっと早くに問い合わせていれば良かったんだよ!)

さて、はたしてメガとは??


詳しい説明をすっ飛ばすと
これは、名詞ではなく、接尾美称なのだそうだ。
本来は、<メ>の部分が接頭美称、<ガ>のところが接尾美称だったらしいけれども
時代を経るにしたがい、いつの間にか
<メガ>で、接尾美称になったとか。
可愛いもの、愛すべきものにくっつけて使い、
強いて言えば、東北弁の<娘っこ><馬っこ>の<こ>に近いもの・・・か。
つまり
カマドメガとは
<カマドちゃん>。
それがいつの間にやら
<ちゃん>の部分も含めて、<カマドちゃん>全体で、ひとつの名前になったということらしい。

カマドと同じで、きっと<メガ>も<名詞>だと思っていた私はあっけにとられたのだけれども
「へぇぇ〜〜〜〜〜」と思ったことが、
もうひとつ。
同じく<メガ>の付く名前で<カニメガ>というのがあるのだけれど
この<カニ>、

チョッキンチョッキンチョッキンナ〜〜〜♪♪
と歌いつつ、うっかりウサギの耳を切ってしまった(←ひどい話だ)あの蟹ではなく

金(カネ)のことなのだそうだ。

つまり、<お金ちゃん>!
(金=幸 の意味もあるから、
<幸ちゃん=さっちゃん>だと博物館の学芸員さんは、書いてたけど。)



カマドメガにカニメガ。


どうか、この子が、食べることに困りませんように、暮らしに困りませんように。
幸せでありますように。



そんな、いにしえの、沖縄の父母達の祈りが聞こえるような気がした。
カニの真実を知った瞬間に。


そう言えば、昔はトメとかスエという名前もあった。
あれも、やはり祈りと言えば祈りだったんだ。

名前は祈り。
誰かに祈ってもらい、こうしてここにいることを、つくづくありがたいなとも思った昨日。

※沖縄県立博物館・民族担当学芸員Kさん、ありがとうございました。※


朝: 野菜炒め(赤ピーマン、緑ピーマン、ブラウンマッシュルーム、油揚げ)
   サラダ(サニーレタス、大根、トマト、クレスのスプラウト)
   フランスパン2切れ、オリーブオイル、りんご、豆乳のヨーグルト、紅茶


<内地という言葉> 2004年 4月5日(月)

生まれて初めて行った沖縄は、八重山諸島の石垣島や西表島で
すっかりそこの島々が気に入った私と夫は、以来、3度ほどリピーターとなった。
八重山諸島の中心、石垣島でも、人口は4万人くらい。
なので、夜中に遊べる場所というのは、多くない。
ましてや、周辺の島々は、推して知るべし。

と言うわけで
八重山旅行中の我々は、連日、本当に早寝早起きの良い子だった。
ご飯を食べ、風呂に入り、酒をかっくらっていると、もう9時過ぎには眠くなる。
そのまま素直に寝、
そのうち、ふと目が覚め
「・・・う〜〜ん、もうそろそろ日の出かしら・・・」
と、枕元の時計を見たらば、まだ夜中の12時半だった
なんてことが、いったい何度あったことやら。

だから、沖縄4度目にして初めて行った沖縄本島の那覇市は、私には不夜城に見えた。
日本中から観光客が集まって来る那覇。
もうそりゃ、バーありーの、スナックありーの、クラブありーの、居酒屋ありーの、
Hな店ありーのの大都会で
我々は初めてここで、ライブハウス巡りをする気になったのだ。
そう、沖縄と言えば音楽。

ただ、沖縄独特の<民謡スナック>という奴には、まだビギナーの我々はチャレンジ出来なかった。
<民謡スナック>・・・
というのは、文字通り、沖縄の島唄(民謡のこと)だけを、生で聴かせるスナックのことで
他の地域にも、こういうのがあるのかどうか知らないけれど
少なくとも、我が香川県には無いタイプの飲み屋さん。
お客は常連ばっかしで
もちろん、お客もステージに上がって、自慢ののどを披露する
という、かなりディープな音楽空間なので、さすがに沖縄ビギナーには、入りづらかったのだ。

なので、我々は、
どんなガイドブックにも絶対に載っている、超メジャーライブハウスを、まずは目指すことにした。
場所は、那覇市の観光の中心国際通りにある
<チャクラ>というお店。
<ハイサイおじさん><花>などの大ヒットで知られる
喜納昌吉(きなしょうきち)がホームグラウンドとする、ライブハウス。
東京で言ったら<PIT INN>とか<クアトロ>みたいなもんでしょうか???

が、勇んで行ってみたらば、喜納さんは今夜はいない、と店の人が言う。
その時の言葉は、今でも忘れられないのだけれど
彼はこう言った。

「喜納は今、内地にコンサートに行っていていないんですよ」

内地。

沖縄の人が、他府県を呼ぶ時、こう呼ぶというのは、本で読んでいて知ってはいた。
でも、実際に、沖縄の人が呼んでいるのを聞いたのは、この時が初めて。

内地。

多分、これが香川県なら、こうは言わない。

「東京へ行ってて」とか
「関西の方へ、コンサートに出てて」とか、具体的な地名を述べるんじゃないかと思う。

内地(沖縄以外の日本の全部)と沖縄・・・・・
このひとことに、沖縄のこれまでの歴史のすべてが凝縮されてるんだなぁ・・・
と、ヒシと感じた一瞬だった。





昨日、沖縄の歌手、大城美佐子(おおしろみさこ)さんのライブに行って来た。
沖縄島唄界のディーバ。
島唄界のマヘリア・ジャクソン、エラ・フィッツジェラルド、アレサ・フランクリン・・・
と私が思っているそんな人が
我が高松にやって来て、歌ってくれた。
沖縄料理のお店の、10畳くらいのお座敷にステージを作って、
客は皆、座布団に座ってディーバの歌を聴く。
ほんの1.5m先に女神がいて
私も夫も、本当に幸せだった。

帰り道、思った。
那覇にある、大城さんのホームグラウンドの民謡スナック<島思い>では、今頃

「美佐子さんは、今、内地に行ってていないさぁ〜〜」

なんて言っているんだろうな・・・と。

私は使わない言葉。内地。
北海道では、もしかしたら使うのかな?かの地の歴史も、他の都道府県とは異質だし。どうなのかな?

内地、内地という言葉が、大城さんの歌声をBGMに、頭の中をぐるぐる回っていた夜だった。



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