天地大乱の物語
風が、吹いている。 それは戦乱の風、死をもたらす風だ。
少年が、荒野をゆく。 身にまとうのは、薄汚れた外套。 黒い蓬髪を風になびかせつつ、一歩一歩、大地を確かめるように前へと進む。
しばらく荒野を歩いていると、少年は厄介な連中を目撃した。鼻を突く腐臭と、青黒く変異した肌。 目はギラギラと異様な光を放ち、人への憎悪を露にしている。“腐れ鬼”と呼ばれる人型の怪物だった。
少年は、小さく呟くと同時に、腐れ鬼たちの背後から躍りかかった。棍棒を振り上げた体勢のまま、骸はどうと倒れ伏す。 その骸の向こう側に、先程の外套を来た人物が立っている。手には、一振りの太刀。足元には、腐れ鬼の骸がふたつ。フードは外れ、顔が露になっている。少年と同じ年頃の娘だった。
風が、吹いている。 それは縁(えにし)の風、人と人とを出会わせる風だ。
かくて“ひとり”の旅は終わり、“ふたり”の旅が始まった。 少年少女が赴く先は、“剣王”、“刀鬼王”、“魔神王”、または“天狼”か。
|