主よ、人の望みの喜びを

 

    第七話 二人の会話            





しばらくたって、シンジの帰国の日。




アメリカ本土上空 日本行SSTO437便 

「シンジ、突然ですまないがよろしくたのむ。」

「わかりました。ご心配無く。教授、それでその研究者の方のお名前は?」

「UN関係の研究者らしいが名前は聞いていない。
 最終決定が終わっていないとのことだ。
 UNからは出迎えは不要と言ってきている。到着後、自宅に連絡があるはずだ。
 まあ、UN留学生としては先輩の接待も大切だと思うぞ。
 それはともあれ、シンジには、カンファランス後はフリーと言ったのに
 すぐに戻ってきてもらうことになってしまって誠に申し訳ない。」

「いや、いいんです。ぼくも日本にあまり長く滞在するつもりはなかったですし…。
 大切な用がひとつあるだけで…。時間は十分にありますから。」

「そうか、そう言ってもらえると私もアイルランドに帰りやすい。」






ネルフ 局長室 

「碇、どうだ」

「問題ない、私も出席しよう。」

「そうか。ところで、アスカ君のことは予定どおりだ。まずは大丈夫だろう。」

「あの才能は惜しいからな。」

「それだけではあるまい。もう少し自分に正直に生きたらどうだ。」

「…それより…」

「レイ君のことか。加持君からは信頼できる人物だと聞いているが…
 しかし、レイ君ももう大人だ。我々が口を挟むことではあるまい。」

「そうだな。それにレイには赤木博士もついている…。」

「碇、赤木君をどう考えているのだ。」

「………」

「まただんまりか。
 ユイ君のことが終わった今、お前が新たな幸せを考えることも悪くなかろう。
 いや、赤木君を思えば、考えるべきと思うがな。」

「………」

「強情なやつめ。」






ネルフ 統括営業部長室 

「みんなに連絡が終わったわ。あの人も来るわ。」

「ありがと。こっちも全て終わったわ。アスカの研究は?」

「ほとんど一段落したわ。アスカ…本物ね。たぶん、ここの次世代の核になるわ。」

「リツコからそのように言われるなんて…。でも、この間、アスカも言っていたわ、
 『リツコが凄いことはわかっていたけど、マヤも凄いわ。アタシはまだまだね。』って。
 たぶん、あなたたちには言わないでしょうけど。」

「ふっ、マヤが聞いたら喜ぶわね。ところで、回線の確保とセッティングの手配は終わったの?」

「専用回線は確保済み。セッティングはもう作業が始まっているわ。
 作業完了の連絡があり次第、試験OKよ。」

「結構よ。ワークステーションの起動はスタッフにさせないで。こっちでするから。
 機器のセットと電源部の確保、回線の開通試験だけでいいから。
 それと、別のスタッフに安全確保と機密保持についても再チェックさせて。
 重量物だけど床の強度は大丈夫でしょうね。」

「心配いらないって。ヤシマ作戦の時よりずっと簡単だわ。
 それにあそこはもともと基本設計が在宅研究を想定して作られているから、
 ちょっとやそっとの物ではびくともしないし、精密機器用の空調もしっかりしているわよ。
 もちろんセキュリティもね。」

「そう。しかし、ミサト、あなたの読みにはいつも驚くわ。そこまで想定していたとわねぇ。」






太平洋上 日本行SSTO437便 

「お飲み物をどうぞ。日本へはお仕事ですか?」

「ええ、会議で…。2年ぶりの帰国です。」

「お忙しいのですのね。あの、プライベートなお願いですけど…会議が終わった後、お暇ならお会いできませんか?」

「すみません。ちょっと時間がないもので。」

「そうですか…、残念ですわ。」




『もうすぐ日本だよ。アスカ』




つづく

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