主よ、人の望みの喜びを

 

    第四話 メール      

 


 


アスカとの会話を終えた後、それぞれのプレゼントを片づけ、レイの写真をリビングのコルクボードに留めたときだった。

シンジの通信端末にメールの着信を知らせる音が鳴った。

送信者は、シンジの指導担当のリーアム デヴリン教授からだった。
 


 【シンジへ
  新東京工科大学で開催されるカンファランスに招聘され、日本に行くこととなった。
  出席者の顔ぶれから見て非常に興味深い内容のようだ。
  随行者可とのことなので、シンジの都合が良ければ同行を許可する。
  これはUN公式行事となるため、会期中の宿泊及び往復のチケットはUNで準備される。
  至急、諾否について回答してもらいたい。
  なお、夏休み期間にはいるので、この出席以外は
  特にスケジュールを私に合わせる必要はない。
  ただし、先日指示したとおり、課題については、
  資料を添えて途中経過を新学期初日に報告すること。
                               リーアム デヴリン 】



シンジの心にアスカの笑顔が浮かんだ。  

『アスカに会える』

すぐに教授に返事を送る。



そして、シンジは、プリンスオブウェールズを丁寧に淹れはじめた。

レイからもらったカップに注ぎ、いすに腰掛け、口に運んだ。



考えこんでいるシンジは、最近はしていなかった仕種をしている。

〈手のひらを閉じたり開いたりする癖〉だ。

アスカからやめるように言われているその仕種にも気づかないほど何か考えている。

しかし、今は『逃げちゃだめだ』のつぶやきはもうすることはない。

すでにシンジは少年から男の顔になっていた。

手のひらをぎゅつと握りしめたシンジはかすかに微笑むと冷えた紅茶を飲み干した。




そのとき、再びメールの到着音が鳴った。

その内容は高揚したシンジの気持ちを少し冷えさせるものだった。



 【シンジへ
  了解した。日本への出発日等は後日連絡する。
  資料をこのメールに添付するので、出席にあたり必要と思われる参考文献を調べ、
  出発前日までに目を通しておくこと。
  なお、選択した参考文献についてリストを作成し、
  来週月曜日の朝までに私あてメールで提出するように。
                           リーアム デヴリン】

そのメールを見て、シンジはひとつため息をついた。
    


 

 

つづく

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