体温

体温を測定する場所が決まっているのはなぜか? 身体の外から測定しやすい場所で、しかも真の体温を比較的よく反映するところでなければならないためです。
●体温とは
 正確には身体内部といっても、器官や部位によって温度差があります。 たとえば、消化管や腹部臓器などは新陳代謝が激しく、熱を盛んに産生す るにもかかわらず放熱されないので、高温を示します。(特に肝臓は高く、 38℃またはそれ以上)。
熱の産生量の高い脳内の温度も38℃近いといわれています。これらは 深部体温 (中枢温)と呼ばれ、体腔温(食道内、直腸内、膀胱内、鼓膜温度)や肺 動脈内血液温が含まれます。
これに対して、筋肉や皮膚の温度は熱の産生量が少なく放熱がおこりやすいので、低くなります。これを 表在体温(抹消温度)と呼びます。
 血液の循環経路から考えると、心臓から出たばかりの大動脈の出口の血液の温度(血温)、体内温度の指標になると考えられますが、日常的に我々はこの血温を測定することは不可能です。
「体温」「呼吸」「脈拍」「血圧」をバイタルサインと呼ぶのはなぜ? 生理機能のうち、この4つがいつでもどこでも容易に外から見分けられやすく 、全身状態を把握できるためです。
●バイタルサインとは・・・。
 
バイタルサイン (vital signs)を日本語に直訳すると、vital=生きている、signs=しるし ・兆候という意味になります。つまり、「生体が生存していくために必要な基 本的生理機能を保存していることを示す兆候」ということです。
*point*
 患者にとって最も適切な看護計画を立てるためには、1日の 測定回数や時間を決めて正確にバイタ ルサインを測定し、その値を正しくアセスメントすることが必要です。 バイタルサイン の重要性を理解し、正しい知識に基く確 実な測定技術を習得しましょう。
そして、プライバシー保護を忘れずに、安全かつ安楽に実施 してください。その時には、バイタルサインの測定の必要性を患者に十 分説明してください。
バイタルサインを測定する意味は? 看護とは、患者の「生活の援助」「基本的ニーズの充足」を主な目的としていますが、その基盤には常に 生命を維持する ことが大前提となっています。多くの疾患は、この生命維持の基本をなす循環、呼吸機能などに影響を及ぼすので、常にバイタルサインを観察することによって、生命の危機及び異常を早期に発見し、対処しなければなりません。また、バイタルサインは 動的なもの なので、日常生活動作に伴って変動します。
 「生活の援助」に重きを置く看護いおいては、 生活現象 としてとらえることも重要です。循環や呼吸に異常のある患者にとって、日常生活動作がどの程度身体に影響を及ぼすのか、またその患者の予備能力はどの程度なのかを知っておかなければ、個々の患者にあった生活援助計画を立てて、適切な生活指導をすることができるからです。
体温の測定部位によって温度差があるのはなぜ? 測定部位によって熱の産生や放熱の程度が異なるためです。
腋窩温は10分、口腔温は5分、直腸温は3分間測定するのはなぜ? 各測定部位によって飽和にたっするまでの温度上昇時間が異なるからです。 これがそれぞれに達する測定時間の目安を示しています。
成人の正常体温が、腋窩で36〜37℃と決まっているのはなぜ? 生命を維持していくための新陳代謝にとって、37℃前後が適温であるためです。
側臥位では上側の腋窩温のほうが高いのはなぜ? 側臥位をとると圧反射がおこり、体の上 方の働きが促進されたり、腋窩動脈の直径が変わるためです。
●圧反射とは・・・。
 体の一部が圧迫されると(おそらく皮内に圧迫を感受する圧感受器が存在し)、圧迫という刺激の信号が脊髄内の側索を上行して中 枢に達し、中枢から興奮というかたちで抹消の気管へ及ぶ、一種の反射現象と考えられています。
体温の測定部位は? 一般に、放熱がなく体温に近い直腸温(平均37、5℃)、口腔温 (直腸温より0.2〜0.3℃低い)、あるいは腋窩温’平均36、5℃)で測定されています。
 この場合、測定しているものはあくまでも腋窩の皮膚温、または口内および直腸内の 体腔温であって、真の体温ではありません。しかし、これらを測定することで、真の体 温レベルを推定することが可能なのです。
そこで患者になんの苦痛も与えず、しかも簡単に測定できる腋窩温あるいは口腔温がよ く用いられているというわけです。直腸温は多少不快な感じを与えるという点があり、 新生児や手術時など以外は、一般にあまり用いられません。
腋窩、口腔、直腸のそれぞれに測定する部位が決まっているのはなぜ? 同じ測定部位でも温度差があるためです。
腋窩温の測定部位は? 腋窩の皮膚の分布は、腋窩の深部が最も高く、上腕二頭筋および大胸筋で、最も低いのは、上腕三頭筋および後背です。したがって体温計の水銀部を、腋窩の真ん中よりもむしろ心持ち前の方に当てることが必要です。挿入方向は、前下方向から後上方に向かって、なるべく腕の長軸に平行に近いように挿入し、体温計の先が後ろに突き出ないように注意します。
測定部位が決まっているのはなぜ? 体温の測定の原則は、なるべく高温部位で測定することです。そのため 、同じ測定部位においても温度分布を知り、温度の高い部位で測定しな ければなりません。
正常な体温でも、1日のうちで体温に差があるのはなぜ? 基礎代謝以外に、運動、食事精神活動などの影響をうけるためです。
「基礎体温」は、早朝、舌下で測定するのはなぜ? 体温の変動を最小限にし、より正確な体温を測定するためです。
年齢によって体温さがあるのはなぜ? 体熱産生や皮膚の熱伝導は年齢によって差があり、また幼少児では体温の調節 が不十分なためです。
肩麻痺患者は、健側で検温するのはなぜ? 肩麻痺の体温のほうが、健側の体温より低いためです。
熱が急激に上がるとき、悪寒・戦慄(センリツ)が起こるのはなぜ? 体温調節中枢の調節レベルが上昇し、体熱の放散を現象させ、体熱産生を高めて調節レベルまで体温の上昇をおこすためです。
*POINT*
体温測定時には、次の点に注意しましょう。
〈測定前〉
・体温計の点検をする。 (破損の有無、水銀柱の切れの有無、消毒済みかなど。)
・体温変動因子を極力排除し、測定前30分程、安静を保たせる。
〈腋窩検温〉
・腋窩温は左右差あるので、 測定は常に同・ じ側で行う。
・測定時に発汗している時は、よく拭いてから実施する。汗をかいていると体温が皮膚に密着せず、また皮膚が冷やさ れて正しい測定値が得られない。
〈口腔検温〉
・測定前10分程は話をしないように、また冷たいものや暖かいものを摂取しない ように指示する。
・測定中は鼻呼吸をさせ、体温計を噛み砕かないように注意する。
・精神障害者・意識障害者・呼吸困難・咳嗽、鼻閉、口内炎の患者には行わない。
〈直腸検温〉
・測定時は、側臥位あるいはシムス位か仰臥位でもよい。
・挿入しやすいようにオリーブ油などの潤滑油を塗る。
・挿入時は腹圧がかからず挿入しやすいように口呼吸をさせる。
・不快感や羞恥心などが伴うので乳児や意識障害のない患者などには行なう が、消火器や肛門しゅうい疾患のある患者、便秘、下痢時には適切でない。
〈測定後〉
・水銀体温計は目の高さで正確に読む。
・水銀体温計は、消毒液の中に30分以上完全に浸す。
・水銀体温計の水銀柱を下げる時は、指示で体温計の測温部を保護するようにして振り、35℃以下に下げる。体温計水銀下降器で下げてもよい。
・電子体温計は表示が消えているか確認し、測温部をアルコール綿で拭く。
・体温表や看護記録には、日時・測定部位・測定値を記録する。