半側空間無視

→半側空間無視とは

 

@何を無視するのか?

 半側空間無視とは、脳の損傷の反対側に提示された刺激に反応したり、注意を向けたりするのに失敗することで、その失敗が感覚障害や運動障害の中でとても目を引く症状です。通常の感覚で言うと、わざと気付かないようにしているとしか思えないほどに、その現れ方はとても印象的です。
麻痺側とは反対に向いたままの頭・視線の、食事の時半分だけ手をつけていない、めがねの片方のつるがちゃんと耳にかかっていない、車椅子操作において麻痺側のブレーキやフットレストの管理に無頓着で麻痺側の障害物にぶつかりやすいなど、行動を共にしていれば日常動作面での関わりから比較的にわかりやすい症状です。
しかし、見た目にとらえやすいその症状は実に複雑な面をもっています。無視の範囲は下記のように、外空間の情報に限らず視覚イメージやボディイメージ、病識など多岐に及ぶからです。

【 無視の範囲 】

・半側空間に提示された視覚、聴覚、触覚などの感覚刺激を無視する。
・半側の上下肢の存在を無視する。
・片麻痺の存在を無視する。
・片麻痺がほとんどあるいはまったくないにもかかわらず、動かすことを無視する。
・票象空間(イメージ)の半側を無視する。
・無視症状を洞察することを無視する。
 

これらの症状は、古くは「視空間失認の半側型」としてとらえらえられてきたが、上記のように半側を無視して行動するという症状が視覚に限らず、聴覚や触覚などのほかの感覚モダリティ、さらには運動することにも観察されます。従来の室認の一形態という概念ではとらえきれない側面を持つため、「半側空間無視」と呼ぶことが一般的です。

半側空間無視の患者さんへのリハビリテーションにおいて問題となるのは、無視症状そのものよりも無視症状への無関心さであったりします。

 

A半側空間とは

視空間における半側とは、決して身体の正中線から見た半側を言うだけではなく、注視した空間の半側も含みます。
例えば、左半側空間無視の場合、左半身から左側の空間を見落とすだけでなく、右半身にあるものでも、目でとらえた空間の左半側を見落とすこともあります。
食事場面を例に挙げれば、お盆の左のおかずを見落とすだけでなく、右側にあるおかずもお皿の右半分だけ食べて左半分は食べ残しているということが挙げられます。福井はこの現象を”たまねぎ現象”と名づけています。

 


たまねぎ現象


B半側空間無視と半盲の違い

 半側空間無視の患者は、両岸の半側視野が欠損している「同名半盲」を合併していることが多い。
半盲のある患者さんはその状態を「見ずらい」「写真のネガフィルムが途中で切れて黒くなっているような感じ」「視野の端が暗い感じ」などと表現します。
それでは、半盲が半側空間無視を引き起こす原因なのか?
半側空間無視を伴わず半盲だけの場合、視線をまっすぐ固定した状況では損傷側と反対の刺激が見えないが、視線を自由に動かせれば刺激を見落とすようなことはありません。
 半盲のみの患者さんに検査を実施すると、見えにくさを代償するのに時間はかかるが、見落とすという失敗は起こりにくいです。視野が狭くなっている状態に対しての本人の自覚、不自由感があります。
対して、半側空間無視の場合は視線を固定した状況、動かせる状況に関係なく、損傷側と反対の刺激を見落としやすい。半側の刺激への関心・注意が失われている様態であり、本人から不自由感を訴えることはあまりありません。半側空間無視は半盲レベル、半側空間無視は半盲を合併する確率は高いが、半盲を伴わない半側空間無視の患者さんも存在しています。半盲レベル、半側空間無視は認知レベルと異なった次元での障害であることを理解しておく必要があります。

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