◆脳槽ドレナージ
【目的】
破裂脳動脈瘤に対するクリッピング術の際に留置され、術後のクモ膜下血腫の除去、髄液排除による頭蓋内圧のコントロールなどが目的です。 脳動脈瘤破裂に伴うクモ膜下出血の場合に、クモ膜下腔に広がった血液が、徐々に分解されます。この分解産物が脳の動脈に悪い影響を及ぼし、脳血管攣縮(cerebral vasospasm)を生じると考えられています。脳槽ドレナージは、クモ膜下腔に広がった血液を髄液と共に体外に排除しその後に起こる血管攣縮を少しでも軽減しようという目的で行われます。

【ドレーン留置部位】
クモ膜下腔の広い部分を脳槽と言います。ドレーンは主に、 頭蓋底部の脳槽(視交叉槽、シルビウス裂槽)に留置されま す。このスペースは広いため、周りの組織と接触してドレーンが閉塞しにくいからです。また、前橋槽にも留置される事もあります。


【ドレーンの管理・観察】

@ 拍動の有無
ルート内の髄液は心拍に同期して、拍動します。回路内の髄液滴下部の先端を見ると、髄液が心拍に同期して動いている様子が見られます。

「回路内で拍動する髄液の拍動が弱くなったり、拍動が無くなった場合。」
★ドレーンの閉塞や抜去を疑って、刺入部から順にルートの確認をします。

A 髄液の性状
通常の髄液は無色透明です。
クモ膜下出血後の髄液の性状は、血性→淡血性→キサントクロミー→無色透明と変化していきます。

※突然キサントクロミーから血性に変わるような場合には、瘤からの再出血、脳内出血での脳室刺破が疑われるため、すぐにDrへ報告をする必要があります。

B 排液量

排液量が100ml/4時間以上になったら、Drに報告の必要が考えられます。
1日単位、時間単位での目標排液量について、Drに確認しておくことも大事です。

【髄液について】
髄液は脳室、脊髄中心管およびクモ膜下腔に存在し、お互いに交通しています。
その量は、成人で両側側脳室に各5ml、第3および第4脳室に5ml、頭蓋内クモ膜下腔に25ml、そして脊髄クモ膜下腔に75ml、合計125〜150mlであると言われています。
髄液は、側脳室の脈絡叢から産生されます。第四脳室から、ルシュカ孔、マジャンディー孔を経由してクモ膜下腔に出て、脳表を循環した後、主にクモ膜顆粒を経て上矢状静脈洞内に吸収されます。

髄液は絶えず、産生→循環→吸収を繰り返しています。 産生される量は24時間に約500ml(1分間に約0.35ml)とされています。 髄液の総量が125〜150mlであることから、1日に約3〜4回の入れ替えがなされています。

「髄液の流出が悪くなった場合」
★ドレーンの屈曲、三方活栓が閉じられていないか確認します。また、ドレーン内が凝血塊で詰まっていないか確認します。 脳室が小さくなり(髄液の流出が多いため、あるいは脳圧亢進のため脳室がつぶれた事で)ドレーン周囲が圧迫されて流出が悪くなることもあります。髄液の流出が急に悪くなった場合には、よく観察し確認した上でDrにすぐに報告しましょう。

「髄液の流出が悪くなった場合、ドレーンをしごいて(ミルキングしても)もよいか?」
★硬膜外ドレーンはしごいてもよいですが、脳室/脳槽ドレーンは脳室や脳槽など脳に触れるように入っているため、あまり強くしごいてはいけません。脳を吸い込んでドレーンチューブが詰まる危険があるからです。また、ドレナージチューブ自体も柔らかいので強くしごく事で、ちぎったり、傷つける危険もあります。ドレーンを柔らかく揉むようにして、ドレーン内の液体が少し行ったり来たりさせる程度で、ドレーン内の閉塞を予防します。

C 刺入部の状態
創の上に当てられたガーゼが濡れてきた場合、ドレーンに髄液が流れずに周囲に漏れてきていると考えられます。 ドレーン刺入部から髄液の漏れが見られた場合は、ドレナージ圧が高すぎないか確認します。髄液漏れは、感染の危険が高くなります。すぐに、Drに報告し診察してもらうようにしましょう。 すぐにDrの処置が得られない場合は、周囲を消毒し、厚めのガーゼを当て直しDrの処置を待ちましょう。

Dドレーンの圧管理
頭蓋内灌流圧の観点、および脳ヘルニア防止の2つの点から脳圧の管理は重要です。 圧設定のなされているドレーンで、圧のコントロールの問題が生じ脳圧亢進が起こると、ただちに生命の危険が出てきます。 ドレーンの異常で脳圧が極端に下がりすぎると、頭蓋内静脈の破錠などによる頭蓋内出血の合併症の危険があります。そのため、ドレーンの圧管理は厳重に行わなければいけません。 脳圧は通常、100〜180mmH2O(10〜15mmHg)程度であるが、これが常に30mmHgを超えるようになると、圧の上昇を招き、脳灌流圧が減少し、脳ヘルニアのため生命の危険が出てきます。

「ドレーンの圧設定」
ドレナージ回路を使用している場合、そのドレーンの高さ自体が脳圧の設定に関わります。設定点は、ドレナージ回路の滴下部直前の最も高い所ドレナージ圧です。基準点・0点(前額部あるいは外耳道)からの高さがドレナージ圧になります。

患者の移動時、体位交換時などには、圧(ドレーン高)の設定の再確認を必ず行います。

E感染防止・無菌操作・逆流防止
脳神経外科領域のドレーンは、ほとんどの場合、閉鎖回路が用いられます。その理由は、頭蓋内(脳脊髄液腔)が無菌状態であり、体の他の場所に比べて免疫が発達していないため極度に感染に弱いのです。わずかな細菌の汚染でも重症の髄膜炎を引き起こす危険性が高いです。 ですから、ドレーン管理は厳重に行う必要があります。 施設によりドレーン管理はDrに限る施設もありますが、厳重な無菌操作に注意すればNsでもドレーン管理は可能です。

排液処理
ドレーンバッグがいっぱいになってきた場合、排液を捨てる必要があります。 あまり排液が溜まりすぎると、逆流する危険があり、バッグ内での細菌繁殖のおそれも考えられます。

「排液バッグの交換方法」
★排液バッグとルートとの接続部は、ポピドンヨード(イソジン)やヒビテンアルコールなどの強い消毒液を用いて、鑷子での無菌操作下に数回の消毒を行った後、新しい排液バッグの交換を行います。

「ドレナージ回路の空気フィルターが濡れた場合」
★ドレナージ回路の空気フィルターが濡れた場合、感染のリスクが高くなります。また、フィルターが濡れ目詰まりすることで、回路全体がサイフォンとして働くようになり、オーバードレナージの原因となるので注意しなくてはいけません。 フィルターは絶対に濡れないように一時的に患者を移動させる際は、しっかりと回路をクランプしフィルターの濡れ予防を行う必要があります。 もし、フィルターが濡れてしまった場合は、Drに報告し、早急に回路の交換を行う必要があります。

「ドレーン挿入部の管理」
★ドレーン挿入部は、ポピドンヨード(イソジン)ゲルを塗布し、感染予防を行います。 また、頭髪は伸びてきてしまった場合は、消毒したカミソリでドレーンを傷つけないように注意して頭髪を剃毛後、消毒してイソジンゲルを塗布、ガーゼで覆います。剃毛は安全のため、Drに行ってもらったほうが良いです。

F「ドレーン抜去予防」
安全のための、一時的な抑制を行う。 脳神経外科領域のドレーンの抜去事故は患者の生命にただちに関わってきます。また、患者に意識障害があることも少なくないため、無意識の体動や手の動きによってドレーンが抜去されることがないように注意する必要があります。 家族に十分な説明を行い、患者さんの安全のために一時的に最小限の抑制を行うことも必要です。

ドレーン固定の工夫
★創ガーゼの下で抜去防止の工夫が、Drによってなされている場合もありますが、基本的にはガーゼの上にループを1つ作りテープで固定することで、外力が直接ドレーン挿入部にかかること防止できます。

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