旨い蕎麦を打ちたい・・・私の手打ち蕎麦


   本当に旨い蕎麦に出合うことは少ない。
   構えがしっかりしていて品のある風情のお店を尋ねても、蕎麦が旨いかというとこれは別問題である。
   最近、蕎麦屋・うどん屋は結構増えたがいざ入ってみようという勇気はなかなかわかない。
   結構選定で失敗しているからだ。
   手打の看板を目指して入ったが、いざでてきたのは明らかに機械打ちだったりする。
   こんなことは、繁盛している店に多い。
   打ちのめされたような気分になる。
   私の蕎麦に対する期待が高すぎるのだろうか。


   20代の半ばは,不規則な食事をしていた。
   仕事柄、寝ボケまなこで話題を探し,市役所や町役場、農協などを歩いた。 
   そこで気がついたことは警察や役場の職員、農協職員は昼食によく蕎麦を食べるということだ。
   昼時分になると近くのを蕎麦屋がオカ持ちをぶらさでげよく蕎麦を届けていた。
   机の上の書類を押しのけて蕎麦を旨そうにすすりあげる様を見て私もよく蕎麦を食べたくなったものだ。
   蕎麦の食べ始めは、このようないきさつだった気がする。


   そのころ食べた蕎麦は結構旨かった。
   今でもはっきり憶えている。
   野木町の国道4号線から渡瀬遊水池に続く街道沿いに小さな蕎麦屋があった。
   しもたやを改造したような地味な店の造りだった。
   が、蕎麦は手打ちで腰があり、つゆもカツオ節の出汁が旨かった。
   注文すると少し猫背のおばあさんが濡れた手で盛り蕎麦を運んできた。
   私は誰かを真似て盛り蕎麦を二枚注文することにしていた。



   歳を重ね、県内の蕎麦を少しは食べ歩いたことになる。
   おいしい、旨いと評判の店はできるだけいくことにしている。
   しかしここにも何やら法則めいたものがあって、人が旨いというからといって
   私にとって旨いとは限らない。
   蕎麦とはそういうものかもしれない。
    好みの問題なのだ。
     ただ,確かにいえることがある。
   私が旨い!と感じるのは、あの野木町のおばあさんが差し出した蕎麦の延長線上にある蕎麦だ。



   旨い蕎麦を打ちたい。
   このことを考えている。
   自分で打った蕎麦はそこそこ旨い、そして,なんともいとおしい。
   しかし,未熟だ。
   あのおばあさんの域に達したとき,私の蕎麦は進歩したと言えるだろう。
   それまでは修行だ。

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