仕事で、成果を上げるのに一番必要なのは、「心」です。「誠」です。「誠」とは、一生懸命に、正直に、自分の力を出しきって、お客さんの身になって仕事をすることです。仕事の結果が役に立たないとしたら、この部分が足りていません。
「仕事の成果」を得るためには、「時間」「金」「人」だけでは不足するものがあります。「仕事の成果」を下の式で表しました。
ここで 「時間」>0、「金」>0、「人」>0ですが 「仕事の心」は、−∽ から
∽ の値を取ります。この値がマイナスに近いほど、マイナスが大きいほど「仕事の成果」は、悪くなっていきます。「倍率」は、間のよさ、わるさ係数です。同じような状況でも、場合により悲劇になり、また何もとがめのないときもあります。問題は「仕事の心」をいかに大きくするかです。
「誠」をつくすのは、口では簡単ですが、実際場面になると、なかなか実践が伴いません。それが仕事の質を落とします。お客さんに向かって「顧客第一主義」「カストマー
サティスファクション」など自分の口から出せば、「誠」もそれと一緒にどこかに飛んでいってしまいます。
実例で心の問題を考えてみます。
1 安全第一
工場とか作業現場には、「安全第一」と看板が上がります。みなに怪我なく安全に仕事をしもらおうという心が不足だと、看板も十分なものになりません。工場には、4つの大きな建物がありました。第一の建物には、一字一メートル角の字で掲示がありました。第二の建物には、50センチメートル角の字で、第三、第四の建物には、掲示がありませんでした。掲示がなかったり、あっても、小さかったり、看板が汚れていたり、物陰に隠れそうだったり。全部降ろして塗りなおし、ないところは、付けました。看板一つでも心を持ってつけることが大事です。
2 取扱説明書の間違い
ある時、ある製品でお客さんから、取扱説明書の中に数字125の1が一字抜ける間違いを指摘されました。その一字を直すと3.000円の版代です。このような場合どのように対応するのが正しいのでしょうか。下の(1)から(4)までの対応があります。
(1) 直さない
言われたことに意識して従わない、あるいはあれこれやっているうちに直しそこなうなどで結果は、直らないことがあります。直した方がよい内容であれば、直さないのは、対応として正しくありません。速やかに直すべきです。
(2) 1を足す
直さないよりは、前進です。しかし、指摘されたところだけ直すのでなく、ほかはどうかと考えるべきです。全ページ見なおし、版代は10万円を超えました。何か指摘を受けたときに、それを広げて考えるのが心です。では、全ページ見なおせば対応として正しいか。まだ十分ではありません。
(3) 全機種の取扱説明書見なおし
取扱説明書は、それぞれの製品についています。悪い取扱説明書があったということは、ほかにも悪い取扱説明書があるかもしれないということを物語っています。150機種くらいの取扱説明書を見なおしました。そこまでやれば十分か。それでも十分とは言えません。
(4) システムの見なおし
悪い取扱説明書があったということは、それを作るシステムにうまくないところがあるためです。そこを直さないとイタチごっこです。
このような問題のときに大体は、(1)または(2)で終わってしまいます。それでは不充分です。1が抜けたといわれたときにその対応の仕方は、心の持ち方で大きく変わってきます。
3 茨城自然再発見
「いばらき自然環境フォトコンテスト」という催しがあって、入賞作品を集めたパンフレットを見ました。作品は、どれもすばらしいものですが、きれいな一瞬を伝えるものばかりです。催しの心は、何だったのでしょうか。それがありません。広く自然の置かれた状況を知ってもらうのが大きな目的のはずですが、壊れ行く自然、病む自然を伝えるものは、何もありません。きれいな一瞬を集めて何を伝えるのでしょうか。
4 ハマギク
茨城県ひたちなか市の「市の花」は、ハマギクです。ハマギクは、11月ころ、海岸に咲く白いきれいな花です。ひたちなか市あたりが南限なので「市の花」になりました。時期になると市庁舎の前のプランタに植えてあります。新しい港、常陸那珂港から高速道路への橋に「ハマギク橋」の名が付きました。でも「市の花」にする心は、そのようなものではありません。ハマギクの生育地を大事にすることです。生育地の海岸は、テレビあり、タイヤあり、空き缶ありのゴミ捨て場です。一度拾いに行きましたが、今は、もう個人では、手におえません。