新人営業マン奮戦記

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新人営業マン奮戦記
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管理人の佐野 力です。
私の書いた小説をご紹介しています。
『自分の好きなことを仕事にできれば良いのですが、就職自体今難しいですよね。ようやく会社に入っても、苦手な営業職に回されたりします。辛かった新人の頃、初めて貰った注文、涙がでるほど嬉しかったこと今でも憶えています。営業職の方はもちろん、営業職のお父さんや恋人をもっている方、ぜひ小説「新人営業マン奮戦記」を読んで下さい。』


「新人営業マン奮戦記 」 第一章 ニューフェース

嘘だろう!こんなこと今時やるの。はち巻きをして、拳を握りしめて・・・
「エイエイ オー」
「エイエイ オー」
「エイエイ オー」
今日は、新入社員研修セミナーの三日目。 「気合入りましたか。皆さんは営業マンになられる方々です。営業は、対人折衝に尽きると言っても過言ではありません。いろいろな人に会って、仕事をしなければなりません。そこで今日は、その訓練のためにアンケートをやって頂きます。アンケートの内容は、特に難しいことはありません。それぞれの人の将来の夢や目標について聞いて下さい。対象は、会社や商店、個人を問いません。セミナーの終了式は明日の午前中ですので、今日はいくら遅くなってもかまいません。それでは、気をつけて出掛けて下さい。」
セミナーを主催しているコンサルタントから挨拶があった。地区割り表と、アンケート用紙五十枚を受け取って出発した。
セミナーの参加者は、三十二名だった。初日は、10Kmマラソン。
ほとんど歩いてい た。運動音痴の僕には、気が遠くなるほど長い距離だった。かなりへばった。しかし、 僕より遅いのが二人もいた。初日に、全部体力を使い切った気がした。
二日目は、自己確認・改革ということで午前中は、自分の短所を五十上げ発表させられた。泣きながら発表している奴もいた。僕は、優秀でないことは解っている。それ でも、改めて自分の短所を五十紙に書いて発表すると、さすがに自己嫌悪に陥った。午後からは、自分の長所を五十上げ発表した。これは、なかなか上げられるものではない。眉毛が綺麗だとか、肌が綺麗だとか、視力が良いとか、思いつくことを何でも書いた。案外、自分にも良いところがあるものだと不思議に思った。
僕は、山本夕介二十二歳。今年の三月、仙北市にある私立大学を卒業した。その私立大学を、駅弁大学と言う人もいる。
不景気で就職難と言われていたから、早くから就職活動をしていた。新入社員を募集する企業自体、例年になく少なかった。それでも、九社受けた。ある衣料品販売のチェーン店では、アルバイトのことを評価され、二次試験までいった。しかし、郵送されてきたのは不採用の通知だった。また、電気製品の量販店では、ロールプレイングといって模擬的に接客する試験があった。アルバイトで、ある程度慣れていたから、旨くできた。かなり期待していたが、だめだった。内定は一つも取れなかった。結局、母の弟で その叔父のコネで、どうにかやっと就職できた。

仙北市にある青葉機工梶B 産業機械からメンテナンスパーツ、その他工場で使用するものはなんでも取り扱っている商社に就職した。従業員三十五人。年商二十億。東北地区の業界では、中堅規模といったところだろうか。僕は、その城南営業所に配属された。
入社早々の業務命令が、新入社員研修セミナーに参加するようにということだった。 所長からは、『会場は、仙都ホテル。仙北市では一番良いシティホテル、なかなか行く 機会もないだろう。気楽に行って来るように。今年、本社に入ったもう一人も出るそう だから。』と、言われた。本社に入ったもう一人は、穐田由雄といって国立大学を今年 卒業し、入社試験はトップの成績だったようだ。幹部候補生らしい。研修会場には、 黄色いスポーツカーでやって来た。向こうから声をかけてきた。敵わない感じがした。 彼のことは気にしないで、マイペースでやって行こうと思った。
冗談じゃない。これじゃ、まるで[地獄の特訓]じゃないか。何かの雑誌で読んだこと がある。朝の通勤通学で混雑している駅前に立って、来る人来る人に『お早うございま す。』と、大声で挨拶したり、見知らぬ家を訪ねて、トイレ掃除をしたりする訓練を見 た記憶がある。
「すみません。アンケートに協力して頂けませんか。」
「何だ、いったい。あんた、新興宗教か?帰れ!」
「いや、そうじゃないんです。どうかアンケートに・・・」 もうちょっとで、足に水がかかるところだった。後片付けの、じゃまになったのかもし れない。豆腐屋さんの次に、日本茶の販売店に入った。
「あのー、奥さんアンケートに協力お願いします。」
「アンケートなんか言って、何かの売り込みなんでしょう。」
「い、いえ違います。」
「忙しいから帰って!」
とほほ、先が思いやられる。靴の販売店があった。中を覗くと、ほとんど客が入ってい ない。
「ごめんください。あのー、アンケートに協力お願いします。新入社員の研修なんです。 」

    
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