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「新人営業マン奮戦記 」 第一章 ニューフェース ページ2

「何のアンケートですか?」
「あなたの将来の夢や目標は、なんですか?」
「夢ありますよ。自分の作った曲でメジャーデビュウーして、プロになること。それで、 今バイトしながら練習しているんです。夜、通りでパフォーマンスしてます。 今度、見に来て下さい。」
「あっ、そうですか。頑張って下さい。ありがとうございました。」
髪が赤かった。プロを目指す、ストリートミュウジシャンだ。
今日は、土曜日、会社は休みのところが多いはず。とにかく、件数を稼ごう。歩いて いる人にも聞いてみよう。
「あのー、アンケートに協力してもらえませんか。」
「キャッチセールスでしょう! やーだ。」
「違いますよ。あー」
行っちゃった。女子高校生に、キャッチセールスに間違えられた。
「すみません、アンケートに協力お願いします。」
スーツ姿の年配の男性に、お願いした。
「これは何ですか?」
「新入社員の研修なんです。」
「あーそう、大変だね。どういう内容ですか。」
「あなたの将来の夢や、目標は何ですか?」
「将来というより、今が大切。不景気だからね。資金繰りが大変!とにかく、会社続けていかないとね。従業員の家族のこともあるし・・・それじゃ。」 「ありがとうございました。どうも・・・」
今の人、きっと会社の社長だ。
「あのー、おばあちゃん。アンケートに協力お願いします。」
「アンケートって何だ?」
「質問しますから・・・お願いします。」
「何で質問すんだ。」
あー、だめだ。
「おばあちゃん、もういいです。すみませんでした。」
「あのー、すみませんがアンケートに協力お願いします。」
OLと思われる人にお願いした。
「新入社員の研修なんです。何とかお願いします。」
「少しならいいわよ。」
「ありがとうございます。あなたの将来の夢や目標は、何ですか?」
「近い将来、自分のお店を持ちたいの。それで、昼も夜も働いているわ。現在の夢は、 休みが欲しいことかしら。」
「あっ、そうですか。頑張って下さい。ありがとうございました。」
波乱万丈の末、どうにか五十件終わってホテルに戻った。十六時四十分だった。朝九時に出発し、本当に疲れた。度胸がつくどころか、落ち込んだ。木曜日から始まった新入社員セミナーは、日曜日の朝、ようやく修了証書を受け取って終わった。 本社の穐田君とは、軽く会釈を交わして別れた。


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