〜ニワトリ(3不動明王(不動尊)のニワトリ
不動明王像は、燃え盛る炎を背にしている。この炎は、「衆生の煩悩を大智慧の火で焼きつくして悟りに導きたい」との、不動明王の強い意志(本誓)を現わすものとされる。
不動明王が背負う炎は、迦楼羅焔(かるらえん)といい、迦楼羅が吐き出す火炎である。
迦楼羅はインドの伝説上の鳥を神格化した霊鳥で、ガルーダ(Garuda)、金翅鳥(コンジチョウ)とも呼ばれる。
四天下の大樹に住み、火炎を吐き、悪竜を常食とし、金色の両翼は広げると336万里あるという。
迦楼羅は仏教に取り入れられて仏法の守護神とされた。
不動明王像の迦楼羅焔の中には迦楼羅(鳥)の姿が入っているものもあり、迦楼羅の像容の中には鶏のような鳥頭に造られたものもある。
これらの迦楼羅に因んで鶏
(ニワトリ)が不動明王の「お使い」とされたものと思われる。
また、不動明王は酉歳
(とりどし)生まれの人の一代守本尊ともされるが、これも迦楼羅に因むとする俗説もあるという。不動尊に鶏像が奉納されている。

炎の中に迦楼羅(鳥)が刻まれれている不動明王像
今泉不動(称名寺)
神奈川県鎌倉市今泉4-5-1

観音院−秩父札所31番
埼玉県秩父郡小鹿野町飯田2210
金昌寺−秩父札所4番
埼玉県秩父市山田1803-2
 鶏のような鳥頭の迦楼羅像
     〜奈良・興福寺の迦楼羅像−

(甲冑姿の鳥頭人身の立像の頭部)
頭頂部分は欠けているが鶏冠(とさか)があり、 口は嘴(くちばし)になっていて、嘴の脇には鶏のように肉垂がある。

            
天平6年(734)作

不動明王のお使いの鶏(ニワトリ)

中野神社(中野のお不動さん) 
推古18年(609)に中国僧、円智上人が一本の木から彫ったと伝わる、
津軽の三不動尊像の内の一体をを本尊とする。
社名は神社だが、「中野のお不動さん」と呼ばれる。
参道の階段の上に、一対の石造りの鶏
(ニワトリ)が奉納されている。
巴太鼓
(ともえだいこ)に乗る、しゃれた像である。
ここの住職によると、「鶏(ニワトリ)は、お不動さんの迦楼羅炎(かるらえん)の迦楼羅になぞらえられて、お不動さんのお使いとされている」という。
不動明王は、酉歳(とりどし)生まれの人の一代守り本尊でもある。
この縁で鶏像が奉納された可能性も頭をよぎったが、奉納は地元の「婦人一同」で酉歳生まれの人たちではなく、奉納年も酉年ではない。
奉納日は6月28日。月の28日はお不動さんの縁日である。
住職の言葉どおり、鶏像は「お不動さんのお使い」として奉納されたとするのが妥当である。

奉納 昭和37年(1962)6月28日 中野黒森・婦人一同

青森県黒石市南中野字不動舘27
弘南鉄道黒石駅からバスで板留下車歩10分

不動明王は、酉歳生まれの人の一代守り本尊
生まれ年の干支(十二支)で、その人の一生の守り本尊(守護神)は決められている。
一代守り本尊と呼ばれる。
酉歳
(とりどし)生まれの人の一代守り本尊は不動明王である。
なぜ不動明王なのか、その由来は判らない。
しかし、不動明王の向背の迦楼羅焔を吐き出す迦楼羅(鳥)に因んだものとする俗説もあるという。
酉歳
(とりどし)生まれの人から、不動明王に鶏像が奉納されている。


多気山(たげさん)不動尊
宇都宮の西北10Km、多気山(376m)の中腹に位置し、不動明王を祀る。
本堂へは、両脇に南無大聖不動明王の赤い幟が立並ぶ長い階段を登る。
この階段の途中、左右の欄干の外側に、2対のニワトリ像が狛犬と共に置かれている。
左側が雄鶏、右側が雌鶏。
この鶏像が、お不動さまのお使いとして奉納されたものか、酉歳
(とりどし)生まれの人の一代守本尊である不動明王への奉納なのかは不明だが、置かれ方や置かれている場所から後者だと思える。
奉納年なども不明。

栃木県宇都宮市田下(タゲ)町563
JR宇都宮駅より関東バス、大谷・立岩行き「立岩入口」下車、徒歩20分

目黒不動尊・泰叡山瀧泉寺



平安時代、慈覚大師(円仁)が自ら彫った不動明王を
本尊として創設したとされる寺で、
成田不動と共に江戸庶民の信仰を集めた。

(ニワトリ)を彫った大きなレリーフが、参道階段の登り口手前の目立つ位置に奉納されている。
設置場所から、一代守り本尊である不動尊に酉歳生まれの人が奉納したレリーフと思われる。

東京都目黒区下目黒3-20-26
東急目黒線不動前駅より徒歩15分、渋谷・五反田駅よりバス