〜イヌ(8)  鷲峰神社・白鳥神社の狆(ちん)
一般に日本犬(和犬)というと、秋田犬や柴犬などで代表される、吻のとがった顔、三角の立ち耳、巻き尾などを特徴とする犬種(切手右を参照)が先ず頭に浮かぶが、狆(ちん)もまた日本犬とされる。
(下段切手・左を参照)。
平成18年戌年の年賀切手

(左)狆・佐土原人形(宮崎県)
(右)秋田犬         

狆は、厳密な意味で日本古来の犬ではない。
天平4年(732)に朝鮮半島の新羅から聖武
天皇に献上された犬を祖先に、日本国内で改良されてきた犬種である。
鼻が詰まっていていて(短吻で)愛嬌のある滑稽な顔、幅広たれ耳、大きく丸い出目、長い毛などを特徴とする。
愛玩犬として珍重され、江戸時代には大奥や上流階級の女性にもてはやされた。
切手に見られるような郷土玩具(土人形)にもされて各地にある。
狆は狛犬にもされた。
江戸期の流行(はやり)を映す変り種狛犬だという。
狆像は狛犬の一種で、神使ではない
鷲峰(じゅうぼう)神社の狆(ちん)
祭神は大己貴命、素盞鳴命、稲田姫命。
社伝に、「八千戈神(=大己貴命)が白尾の大鷲に乗ってこの山に鎮座したので、
山を鷲峰山といい、神を鷲峰神と称するようになった」とある。
この社に、台座を含め高さ2メートルを超える「狆(ちん)」の石像の一対が奉納されている。
阿吽をして鷲峰山を見上げている。
首輪に大きな鈴をいくつもさげ、立派な胸飾りをつけている。
この像は、広島の三次人形(土人形)の狆によく似ているという。
江戸時代末期にこの地方で活躍した
「名石工、川六(尾崎六郎兵衛)」の作である。
江戸時代、狆の犬筥(いぬばこ)は上流階級では嫁入り道具や安産のお守りともされたという。
なお、神社は「狆と特別な縁があって、奉納されたものではない」とのこと。

万延元年庚申(1860)九月
願主 富村中 村役人万四郎
北□原住 川六作


鳥取県鳥取市鹿野町鷲峰
JR山陰本線「浜村駅」下車、バス鷲峰下車、歩12分
白鳥神社の狆
白鳥神社は、皇子日本武尊が蝦夷征伐のとき布陣したこの地に、第12代景行天皇が亡き尊を偲んで大宮を建立したのが礎とされる。
日本武尊は東夷征伐の帰途、大和を目前にした伊勢で亡くなり、霊は墓から白鳥となって飛び去ったといわれる。
この社の拝殿の前に、「狆」と思われる像が置かれている。
短吻で、幅広たれ耳、大きく丸い出目と狆の特徴を備えている。
高さは60cm位。
奉納は
文化4年(1807)4月
愛玩犬を示す縄の首輪が粋に付けられているが、この結び型が200年間も途切れずに付け替えられてきたのでは、と想像する。
狆が奉納された由縁や経緯は判っていない。
江戸期の変り種狛犬である。しゃれている。

宮城県村田町大字村田字七小路3-3
東北本線大河原駅下車、バス川崎線村田営業所下車