〜イヌ(5)  和犬とオオカミ
和犬とオオカミの関係は近い。
オオカミが和犬になったり、和犬がオオカミになったっり…
ここでは、置かれた土地(場所)や事情に合わせて、本来の形などを変えて造られたと思われる像をご紹介する。
和犬になったオオカミ
本来は、オオカミであるものが、この地では和犬風になっている。
           建立年;明治13庚辰年9月(1880)
           石 工;溝ノ口 内藤留五郎
           奉 納;伊勢太々講連名
    
           講元 伊藤壽三郎、他世話人多数名連記
              建立年;平成2年10月(1990)

この拝殿前の新しい像は、拝殿横の先代・内藤留五郎作の100%コピー
そっくりに造られてはいるが、どこか朴訥さがなく、ケンがある。
新像は、教育ママと肥満児?といったところか。

子母口 橘樹(タチバナ)神社  神奈川県川崎市高津区子母口
 日本武尊が東征の折、この地から上総へ渡ろうとして船出したが、海は荒れ狂った。
このとき、弟橘媛が入水して海を鎮めた。
この媛を偲んで日本武尊が建てたのがこの社だとされる。
日本武尊の
眷属、神使はオオカミである。
従って、この像は
オオカミの筈だが…尻尾は通常の和犬より長く造られているものの、ご覧のようにほとんど和犬に近い。
左右子連れの像は、地名の「子母口」に因んだものとも思われる。
オオカミになった和犬
本来は和犬であるものが、秩父・奥多摩ではオオカミの特徴も見られる。
武野上神社(丹生明神) 埼玉県秩父郡長瀞町本野上
丹生明神は弘法大師と縁がある。この神社はかつては丹生(ニブ)さまと呼ばれた。
「祭神は、吉野の丹生川上神社中社に鎮座する、水神・罔象女神(ミズハノメノカミ)(丹生明神)を勧請したもので、
眷属はオオカミではなく和犬」だと、長瀞町史民俗編にも載る。
この像は、本来、和犬であるものが、
この地が秩父ということで、オオカミ風にデフォルメされた。牙、長い尻尾があるものの、他の秩父のオオカミ像とは異なる。
また、子連れの像も他ではみられない
弘法大師の和犬・B で紹介した高水山の和犬

赤い紐の首輪をした像は、一見「犬」のようだが、横から見るとオオカミ像の特徴も持つ。
本来は
和犬である。
奥多摩が「
お犬さま(狼)信仰の地」であることから、オオカミ風になったと思われる。

高水山常福院(波切不動) 東京都青梅市成木7町目高水山