■■ 半月ノ夜 ■■





なんとなく寝付けなくて深夜の散歩をしていたら
         公園で黒い猫に会った。

途中のコンビニで買ったパンをちぎって投げてやっても
じっとこちらを見つめたまま食べようとしないので「あげるよ」と言うと
それをくわえて茂みの奥に行ってしまった。




また独りに戻った寂しさで家に帰ろうかなどと考えていたら
黒猫がさきほどの茂みから顔を出した。
口には一輪の花。



私の足元にそれを置くと、にゃーんと鳴いて目を細めた。
どうやらお礼のつもりらしい。
「ありがとう」
なんだか嬉しくなって 花を拾って見せると、
猫は満足そうに ちりんと鈴を鳴らしながら夜に消えた。







猫の去った方向には満ちかけの半月が
ウインクした黒猫のような目でこちらを見つめていて・・・
猫のくれた花はその光をうけて 手のひらの上で静かに甘く香っている。
眠れぬ夜の不思議なできごと。