贈り物 in黒





『Schwarze Katzへの贈り物』への贈り物を管理人Dinkの独断と偏見で、
黒・灰・白へと別けさせて頂きました。
 送って頂きまして本当に有難うございます。
ここへ掲載させて頂いた物の著作権その他に関しては、送って頂いた方にあります。
 無断での転載・掲載はお断り致します。



















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AKIRAさんよりの贈り物です。

Presents01 ”最愛の・・・”
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その青年は、ほの暗い天井に
さだまらない視線を投げかけていた。

もう、どれくらい眠らずに過ごしたのか・・・
一体、今、何時なのか。
いや、何日なのかも分からない。

この光を閉ざした部屋の中では・・・

青年の心にとってはそんな事はどうでもよかった。

今の青年にあるのは、
ただあの時の感覚だけだった。

そう、これからを共に過ごそうと
誓いあい、永遠を交わした最愛の・・・

青年が初めて共鳴した心の音。

これから一緒に、ただ一つになれと・・・

(傷・・・  やすらぎ・・・  痛み・・・  夢)

青年の心に新しい何かが芽生えはじめた。

そのとなりには最愛の・・・

そう、もう吐息を感じさせることもなく、
光を受け取る事も出来ない鈍色の瞳で、
青年と永遠を交わした最愛の・・・

その首すじの美しくドス黒い、
二人の証の細い一筋の跡

・・・モウ、誰ニモ汚サレナイ・・

青年はただ静かに
ゆっくりと眠りに落ちて行く。

そのとなりには
ただ冷たい最愛の・・・



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AKIRAさんよりの贈り物です。

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Presents02 破片の滴(しずく)
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鏡に向き合う二人の少女
うれしくて陽気に笑った可愛い笑顔も、
傷ついて涙にまみれた後の悲しい顔も、
ただ素直に映し続けてきた鏡。

でも今は・・・
鏡の中の少女はずっと
悲しみの涙に濡れるだけ・・・。
もう二度と抜け出せる事の無い鏡の中で・・・。

それを見て嘲(あざけ)り笑う少女の姿。
ただ、ひたすらに演じ続けた過去を捨て
鏡の外の世界へと・・・。
抜け出た喜びをかみしめて、
見つめる鏡を持ち上げた。

”鏡の外の少女は知らない。
 現実の鏡の外の荒(すさ)んだ世界を何一つ・・・”

高らかに笑う鏡の外の少女はいつか
自分のあるべき世界を忘れ
持ち上げていた鏡を激しく
床へと叩きつけていた。

もう戻れない、鏡の外の世界へと・・・。

粉々に砕け散った鏡の破片
その一つ一つの小さな鏡は
今はただ、少女の涙の滴(しずく)を浮かべ
何も映さず濡れていた。

現実を知らない少女は今はただ
満足気な笑みを浮かべるだけで・・・



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AKIRAさんよりの贈り物です。

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Presents03 決意の果て

女は心に決めていた。
今日こそ彼と別れると・・・。

出会って何年経っただろう。

楽しい思い出、辛(つら)い思い出
どちらが多かったのだろう?

自分に問いかけ女は笑う。

辛い思いは何度もあったが、楽しい思い出は・・
ほんの少し・・・。

彼にとっては私なんか・・・

とにかく、今はもう、終わりにしよう。

待ち合わせの場所・・いつもの場所に彼はいて・・
いつもの通りの深夜のドライブ。
いつものコースを走り、静かな森へ進んで行く。
いつもの所で車を停めて
いつも通りに体を重ねる。
ただ一つ、いつもと違う気持ちの中で・・・

女は彼を外へと誘い
彼と深夜の散歩を楽しむ。
人気の無い暗い森の奥へと入り
熱い唇を重ね合う。

やすらぎを感じる時は過ぎ
離れゆく二人の姿があった。

女は一人、車へ戻る。
彼に別れを告げながら・・・。

その青白い手を深紅に染めて
血まみれのナイフを握り
思いを果たした笑顔を浮かべ・・・。

女は黙って彼と別れた。

”だけど、誰にも、わたさない”

その言葉だけが
むなしく心に響いていた・・・。



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