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第4話 瑠璃色の爪〜竹取物語


 隆江ちゃんは”竹取物語”の絵本が大好きです。だから、皆に「タケちゃん」とさえ呼ばれています。そんなタケちゃんは今日はなんだか楽しそうです。
 実は、今日はタケちゃんの誕生日で、幼稚園のお友達からプレゼントをもらうことになっていたのです。
「一番素敵なプレゼントをくれた人のお嫁さんになってあげる。」そんなタケちゃんのセリフは大好きなユウキ君が自分のことをどれだけ思ってくれているのかを、確かめる意味もありました。
 もしも、ユウキ君よりも、やんちゃなモリオ君か少しおすましのタカシ君でも良いかな……でも、何をやってもどんくさいアキオ君だけは嫌だな……なんてことも考えていたのです。

 まずは、「白い羽の生き物」と言っていたモリオ君。勝手に「空を飛ぶペガサスに決まっているわ」なんて思っていましたが、ただのモンシロチョウでした。
 次は「綺麗な着物」と言っていたタカシ君。勝手に「舞踏会に着ていくためのドレスに決まっているわ」なんて思っていましたが、ただのヒーローものの写真をプリントしただけのTシャツでした。
 「いいもん。まだ大好きなユウキ君はお金持ちの家の子だし、『宝石』って言っていたもの」タケちゃんはニヤニヤと笑いながらユウキ君を見ました。
 ユウキ君は自慢気に河原で拾った赤や黄色や青の小石を入れたビニール袋を差し出しました。
 タケちゃんは一瞬がっかりしましたが、お嫁さんがかかっているからと、大げさにユウキ君の小石に喜んでみせました。
 もうユウキ君に決まったからとアキオ君を無視しようとしたタケちゃんでしたが、ユウキ君達はアキオ君に「早くだせよ」と迫りました。
 アキオ君は水道の前に立たせたタケちゃんにすくい上げるように両手を前に出させると、水道の蛇口をひねりました。すると、タケちゃんの手の平の上をアーチを描いた水の下に七色の虹が出来上がりました。それはまるで、タケちゃんの手の上に七色の虹が乗っているように見えます。
 ユウキ君達は凄いと手を叩いて喜んで、アキオ君に負けを認めてしまいました。
 アキオ君はユウキ君達に押されながらタケちゃんにぶつかって照れています。ユウキ君達は「お似合いのカップル」とはやし立てます。
 タケちゃんは悲しくなって泣き出してしまいました。


This story was written by Dink in HP『しろく』.