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第5話 瑠璃色の爪〜桃太郎


幼稚園から帰ってきた太郎君。いつもなら、お仕事から帰ってくるお母さんを、絵本を読みながら寂しそうに待っているのですが、今日はなんだか楽しそうです。
 冷蔵庫を開けて中を覗き込んで考え事をしているようです。トマトをつかんでじっと見つめては、「これは違う。」大根をつかんでは「これも違う。」
 しかし、どうやら見つけたようです。
「あっ。あった〜。」そうです桃を探していたのです。でも、何か桃をぐるぐるとなめまわすかのように見つめていましたが、う〜んと考え込んでしまいました。
「ちょっと、小さすぎるなぁ。」そういうと、桃を冷蔵庫のなかに戻しました。  今度は一生懸命に力を振り絞ってまん丸の大きなスイカを抱えあげました。
 太郎君にはちょっと重すぎたようです。太郎君はよろけながらスイカを落としてしまいました。落としたスイカは割れてしまい、その上に倒れこんでしまって太郎君のシャツも真っ赤な汁がついています。太郎君とても痛かったのでしょうか!?座り込んで泣き出してしまいました。
 随分長い間太郎君は泣いていました。すると、お母さんが帰ってきてびっくりです。
「ちょっと、何やっているの!?」
太郎君はお母さんに抱きついてさらに泣き出しました。
「お母さん。スイカ太郎が死んじゃったよ〜。わ〜ん。」
 居間には、太郎君が一番大好きな"ももたろう"の絵本が落ちていました。


This story was written by Dink in HP『しろく』.