Shimizu Tatsuo Memorandum

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きのうの話      

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2019.11.11
 先々週のことだった。
 台所で朝食の用意をしていたとき、右足がいきなりがくっとなり、思わずよろけた。
 踏ん張りが利かなくなって、倒れそうになったのだ。
 つまずいたわけでも、なにかにぶつかったわけでもない。
 ふつうに立っている状態から、歩こうとして右足を踏み出した瞬間、突然そうなったのだ。
 え、なに、どうして?
 わけがわからなくて、自分でも混乱した。
 躰が自分のものではなくなっていた。
 とくに右半分の力が抜けた感じで、うまく言い表せないが、これまで一度も経験したことのない感覚だった。
 これはまずいと思ったから、すぐ傍らの椅子に腰かけ、数分じっとしていた。
 それでなんとか治まったのだが、完全にもどったわけではなかった。雲の上にいるような、ふわふわ感がつづいていた。
 とにかく横になるわ、と言って自分の部屋に引き揚げた。
 それからのことは省略するが、かみさんが心配した脳梗塞でなかったたことはたしか。
 数日たったら、どうやらよくなった。
 これまで立ちくらみとか、目眩のようなものに襲われたことなら、何度かある。
 だが生命そのものが脅かされているような、恐怖と不安を覚えたのはははじめてだった。
 それでなくても、なにが起こってもおかしくない年齢に達している。これまで平穏にこられたのは、幸運以外のなにものでもなかったと、ようやく実感したのだった。
 気になるから、その後自分なりに調べてみた。
 どうやら大元は、持病の糖尿病からきたのではないかと、いまは思っている。
 糖尿病の定期検診は受けており、薬もきちんと飲んでいる。
 糖尿病の指標であるHbA1cの数値は一応許容範囲、その数値を守るぐらいの節制はしている。
 一方でずっと、中性脂肪が高いと指摘されていた。このごろその数値がますます高くなり、医者が首を傾げるまでになった。
 原因はなんでしょう、と空とぼけて聞いたら、食生活ではないかと言う。
 脂分と、甘いものの取り過ぎではないかと。
 ぎくりとした。
 思い当たること大ありだったのだ。
 来月で満83歳になる。一昔前ならたいへんな長命だ。つまりもう十分に元を取った。
 これだけ生きりゃ十分だろう。これからは太く短く、好き勝手にやるぞ、というので最近は我慢なし、食いたいものを食うようになっていた。
 脂ものはともかく、甘いものが大好きなのだ。とくに餡子もの、大福、ぼた餅といったものには目がない。
 甘味飲料は全然飲みたいと思わないのに、和菓子系の甘いものになるとまるで抑制が利かなくなる。
 昨夜はテレビの健康番組で、中性脂肪とコレステロールをテーマにしていた。
 出てきた専門医が、卵も大敵だと言ったからびっくり。じつは卵も大好き。週1〜2個が適量だというのに、平均7〜8個は食っている。
 いくら元が取れたとはいえ、これでは躰にいいわけがなかった。
 今回のふらつきの原因がそれであったかどうかはともかく、タガの外れた昨今の食生活が、よくなかったことはまちがいないだろう。
 今週から大いに反省、いま手元にある菓子を食ってしまったら、摂生生活にもどるつもりだ。
 かみさんの知らない大福がまだ残っているんだよなあ。

 先日、頼んであった屋根屋がやっと見に来てくれた。
 修理可能ということだったが、2階棟瓦の飛んだところは高くて危険なので、足場を組まなければならないという。
 まだ見積もりは出ていないが、相当かかりそうだ。とはいえ工事をしてくれるのは、来春になってから。
 順番だから、それまで待つしかないだろう。


2019.10.21
 台風19号の惨状が明らかになるにつれ、言うべきことばがなくなってしまった。
 まさかこれほど大きな被害になっていようとは、思いもしなかったのだ。
 それに比べたら、わが家の被害などかすり傷程度、大騒ぎするのが恥ずかしい。
 とはいうものの、やはり雨漏りは困るのだ。
 金曜日の夜、またかなり強い雨が降ったので、おちおち安心して寝てられなかった。
 ぽとん、ぽとんと、天井裏で雨の漏りはじめた音が、部屋の中にいても聞こえてくるのだ。
 せがれがまた屋根に上がり、ブルーシートを掛け直してくれたから量はそれほどでもなかったようで、廊下まで垂れ落ちてくることはなかった。
 天井裏まで上がる方法がないから、どれくらいの漏水なのか、たしかめて見ることができないのである。
 これから強い雨が降ってくるたび、同じ心配をしなければならないわけで、こうなったら1日も早く修繕したいと考えている。
 ところがそういう家が、県内だけで何千戸もあるわけだから、見てもらうだけでもなかなか思うようにならない。
 市内の屋根屋に電話したところ、年末までは見積もりにも行けないと言われた。
 屋根がまるまる剥がれた、といった家がどうしても優先されるから、わが家などいちばん後回しにならざるを得ないということだ。
 しようがないとはいえ、それまで不安や不自由を堪え忍んでいなければならない。
 漏水が度重なってくると、そのうち天井裏が腐ってしまうことも考えられ、雨が降るたび憂鬱な思いをしなければならないようである。

 本がようやく発売になりました。
 昨日、都内のせがれが、新刊書の広告が新聞に載ったと知らせてきた。
 見本は先週もらっていたが、いつ発売されるのか知らなかったのだ。
 改めてお知らせしておきます。
 書名は『新蔵唐行き』、発行は双葉社、1600円、まずまず面白いものが書けたと思っております。


2019.10.14
 台風19号の被害が予想外に大きかったからびっくりしている。日本中がこれから先、その後遺症に苦しまなければならない。
 さいわいなことに、わが家の被害はきわめて軽くすんだ。
 屋根瓦が剥がれているところから何カ所か水漏れは発生したものの、これははじめから覚悟していたこと。ふたつのバケツに半分くらい水が貯まり、ほかにも壁がにじむ、天井や羽目板に漏水が流れるといった状況は起きた。
 水漏れの応急措置として、今回大いに役立ったのが赤ちゃん用の紙おむつだった。
 ネットを通じて知ったもので、水漏れ箇所へじかに充てたり、水が伝い落ちる壁に充てたり、手軽に使えてしかも有効だった。
 ふつうの家庭でも、漏水や湿気の多い場所の手当て用として常備しておくとよいと思います。
 とにかく前回のような目には遭いたくなかったから、今回は徹底して自衛策を講じた。
 まずブルーシート。家のなかで使う想定で予備を購入。
 長い行列ができるガソリンスタンドには行かなくてすむよう携行型ガソリンタンク。
 停電になったときの3日間氷が持つというハードタイプのクーラーボックス。
 パソコンや携帯電話のバッテリー充電用インバーター。
 応用が利く室内用ランタン。
 昨日一昨日は、このような非常用品、乾電池、ガスボンベ、保存食などを買い求める人で、スーパーや量販店がごった返していた。
 売り切れになっている店も多く、わたしも何軒もの店を回って手に入れている。
 昨日はいよいよ台風の襲来日。
 満を持して午前中に入浴をすませ、午後はその浴槽を洗い、あたらしい水をたっぷり張った。
 窓ガラスには飛散防止用テープを貼り、準備完了、10日ぐらい断水・停電生活がつづいても耐えられる備えをして台風を迎えたのだ。
 その間都内のせがれや郷里の親戚からは、避難するようにと何回もメールがきた。
 聞き入れなかったわけではないが、わたしとしてはなんとなく、今回は無事に終わりそうな気がしてならなかった。
 台風が伊豆半島へ上陸するというニュースを聞いたときは、世評とは逆に、これで千葉直撃はないなと直感した。
 それが当たったわけで、千葉に限って言えば、今回は雨、風とも前回の台風15号に遠く及ばなかった。
 台風、土砂崩れ、水害などの天災はいずれも子供のころ経験している。
 住む家を選ぶとき、真っ先にこれら災害を考えるのが習いになっていたくらいで、だからこそこれまで大きな災害には遭わなくてすんだ。
 台風19号が外れてくれたのは幸運に過ぎなかったとしても、今回の千葉の被害が比較的少なかったのは、前回の台風に懲りたみんなが、必死になって対策を講じていたからということも言えるはずなのだ。
 災厄というものは、備えがあれば来ないものなのである。
 天災など100年に1度だと思って油断すると、手痛いしっぺ返しを食らう。
 日本で生きている以上、地震、台風、洪水といった災害は避けられない。その被害をいかに小さくするかは、やはりふだんの備えしかないということである。


2019.10.1
 破損した屋根瓦に応急措置としてかぶせてあったシートが、台風17号の風であっけなく飛んでしまった。
 瓦の剥がれたところはブルーシートで覆って土嚢で押さえつけてあるから、こちらは異状なかった。
 ほかにも、瓦が1枚剥がれたとか、棟瓦が数メートル剥がれたとかいうところが3箇所あり、こちらは面積が狭いから風呂敷大のビニールシートを掛け、テープで留めていた。
 強い風が吹いたときはどうかなと思っていたところ、ものの見事に吹き飛んだ。
 強力なテープを買ってきてもう一度貼りつけたが、さて、いつまで保ってくれるか。
 それより罹災証明をもらえなかった。
 おたくは損害軽微だから、これくらいは我慢しろということらしい。
 罹災証明がないと、罹災ごみの搬入も有料になるのである。
 せがれが手続きに行ったのだが、自己主張をするタイプではないから、軽く見られたようだ。
 ほんとはわたしが行くべきだったが、あいにく仕事が滞っていたので時間が取れなかった。
 来春、短編集の文庫を1冊、復刻版で出してくれる話が決まり、それに書き下ろし短編を1本追加することになった。
 9月中に書き上げる約束で取りかかっていたところ、思わぬ台風禍でモチベーションが下がってしまい、困っていた。
 それで先週、多摩へ引き籠もりに行ったのだ。
 おかげでラグビーのアイルランド戦を見損ねてしまった。
 短編の方は数日遅れでなんとかなりそうだが、罹災証明の手続きはせがれがしたので、却下されたというわけ。
 昨日、5日ぶりに木更津へ帰ってきた。
 田舎道をバイクで走っていたら、稲刈りの終わった田の畦で曼珠沙華が咲いていた。
 季節はいつもの秋である。




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