材料→型の取り方→縫い方→貼り方→表紙・裏表紙→点字・墨字→製本→仕上げ
著作権
更新日 2024.3.11
A 材料を選ぶ
手でさわるその感触によって、描かれているものをわかってもらおうとするのですから、素材は、
できるだけ本物・実物に近い、手触りと色のものを使うことが原則です。
(1) 材科選びの注意点
・手触り、色ともに実物に近いもの。
犬・猫・馬・きつねなど多種の登場者があるときは、生地の毛足の短いもの・長いものまた、
さらさらしたものふかふか したものなど、少しずつ変えること。
見える子と一緒に見るため、色も実物に近いこと。
しかも、識別しやすい色・配色にすること。弱視の子のため、よく似た色は避ける。
白い台紙に白いものを貼り付けると識別しにくい。常にはっきり区別できるように心がけ
ます。
・薄い布は貼り付けるとわかりにくいので避けます。ほかに代用のものがない場合は紙で
裏打ちしたり、何枚も重ねたり、綿を入れたりして使うこと。
・指先を傷つけそうなものは使わない。
幼い指先を傷つけないように気をつける。針金・プラスチック・木など使う場合は、端の始
末によく注意すること。サンドベーパーは使わない。
同じ材料を異なったものに使わないこと。
一冊の本の中では、絶対に同じ材料をほかのものに使わないこと。
色違いだからといって、フェルトを犬にも、猫にも、人間などにも使ってしまわないこと。
また、途中で生地が足りなくなって、同じものに異なる材料を使ってはいけない。
・全体の大きさ、厚さを考えて素材を選ぶこと。
何度もでてくる物に、厚い布地を使うときは、絵本の厚みが増すので注意する。
・ほつれるものは、使わない方がよい。使う場合は、必ず端をまつること。
少しほつれるかなと思われる生地は、接着芯をはさんで裏打ちするとよい。
(2) よく使う材料
台紙は、パルプ料の多いもの。レントゲンフィルム包装用厚紙を、病院からいただい
て使っていましたが、最近では、包装形態が変わって厚紙が、少なくなったので、AC
カー(No.350白色A3)を購入しています。
登場物によく使う材料
厚手無地ウール、綿布(服やズボン)、綿ジャージ、レザー、陶器ねんど(角、くちばし)、
ペーパーフラワーやリポンフラワーの材料など。
使用例 (他のものを使ってはいけないという事ではありません。)
人間 = メリヤス、はだ色の薄い綿ジャージ
木の幹 = 紙ひもをほどいて平らにし、紙で型を作りその上にはる。
木の葉 = 葉はアートフラワーの布地を染め、一枚ずつ切り取り、間に針金を挟みボ
ンドで張り合わせた物を組み合わせ技にする。
目 = 丸いビーズ、ボタン(裏ボタン)、刺繍のナッツ
水 = 木工用ボンドを線に引く、水色のナイロンなわ
涙・雨 = ビーズをとびとびに縫い付けるか、木工用ボンドを滴状に落とす。
流れる水 = フィルムの細切り、ナイロンなわ、ボンドを糸のように引く
髪の毛 = 極細の毛糸や刺しゅう糸の黒や茶色
猫等動物のひげ= 釣り用てぐす
土 = 壁紙、ざらざらした布
鳥 = 毛足のある布地で本体を作り、羽根を縫いつける
砂 = ナイロンタオル
B 形の取り方
(1)登場人物の大きさの決定
登場人物の中で、一番大きいものと一番小さいものを比べます。
1ページの中に一番登場人物が多いぺージから、それぞれの大きさを決めていく。
小さい物を作るのは難しいので、それぞれの大きさをよく検討して決めること。
(2)本の大きさの決定
幼児が扱うことを考え、あまり大きくなりすぎないように気をつけること。
登場人物の大きさが決まると、左端にのりしろ3センチメートルをとり、本の大きさを決
めます。
縦横40センチ、厚さ10センチ以下が望ましい。 また重くなりすぎないように気を付けます。
(3)形の取り方の注意点
もとの絵をそのまま型どって、布その他のものに置き換えても、理解しにくい場合が多い。
しかし、もとにする本(原本)の絵とかけ離れたものにならないようにすること。
見えている者は、どうしても見える感覚から抜けきれないので、見えないこととは、どんな
ことか、常に念頭に置いて形を決めること。
たとえば、図1の2匹のぶたは、前後に立っているのですが、そのままもとの位置に貼った
場合、前のぶたの上に後ろのぶたが乗っているように思われます。図2のように2匹目は
すこし横にずらして貼るようにします。

図1 図2
・文章をよく読み、物語の展開に必要なものと不必要なものを見定めて、必要なものだけ
を形どります。1ページにたくさん貼りすぎると、ごちゃごちゃしてわかりにくくなりますが、あ
まり省き過ぎると、もとの絵本の雰囲気が壊れます。背景を描きたくなりますが、見える人
と見えない人と一緒に見ていても、手にいれる情報が異なることになりますから、描いては
いけません。
・ 絵本の中から、登場人物や動物の基本となる型を探し出し、コピーで縮少、拡大し基本
パターンを作る。正面、横姿、立位、座位、など手足の長さ・付け方を考えながら型を作り
ます。
・点字の進行に合わせ、全て左とじにします。右とじの絵本が原本のときは 進行が逆にな
るので、絵も左右変えて作ります。
・重なったり、影になった部分は描かれていませんが、下側部分や影部分も形どります。
重 なった部分は、前面を続けて形どり、下側を別に形どります。
・ 手、足など曲げている場合は、その形のまま曲げた状態で型どる場合と、長めに作り曲
げて使う場合があります。
・指は、おおきいものの場合は5本作りますが、ほとんどの場合ミトン状に作ります。
・横向きもそのままとって、正面向きに直す必要はありません。
・机、テーブルは、可能な限り足を4本つけます。
・部分描写(顔だけ、上半身のみ)は、全身を納められるように大きさを決め、描かれてい
ない部分も補い形取ります。絵本の性質上、必要な場合は、、そのまま型どります。
(例えば、顔だけで終始している絵本など)
・本来、独立しているもの、動くもの(足、手、ぞうの鼻や耳、しっぽ、窓、 扉、カーテン、車
輪など)は離れていることがわかるように、また、動くようにします。袋状にしたり、裏打ちを
念入りにする。
・洋服、ぼうし、くつなどは、前面だけ作って貼り付けるのではなく、全体を作り着せるつも
りで形を取ります。ぬいぐるみの薄い物のようになります。
C 縫い方
ていねいに、手抜きをしないで心をこめて縫います。できあがった作品から、その心が読
み手に伝わります。しかし、細工がすぎるとかえってわかりにくくなります。
(1)縫い方の注意点
・顔 丸い輪郭の周囲全部を縫う。裏側になる方の真中あたりを、上の一枚だけをはさみ
で切る。縫い代に切り目をいれ表返す。
・胴体 首になる部分もあわせて裁つ。横向きの場合は、上の側の足は続けて裁ってよい。
正面を向いている場合は、足は一緒に裁たない。顔と同様周囲を縫って裏の真中を
切り表返す。首の上に顔をのせ縫いつける。人の場合、正面で服を着ている場合、
足は胴につづけてとってよい。
・足 一本ずつ縫い裏返す。胴体の縫い目に挟み込む場合と、側に縫いつける場合があ
り、服を着せるときと、動物などそのままのときにより選ぶ。
上側の足は胴に続き、下側の足のみ付ける場合、上側の足の付け根奥に綴じ付け
る。
・手 一本ずつ縫い裏返す。おおきいもの以外は指は作らない。指はおもて返す前に丁寧
に切り込みを入れておく。
・耳 髪の毛に隠れていても作る。四角い布を半分に折って三角形の長編を縫い縮める。顔の横
に縫いつける。
・鼻 丸く縫い綿入れしたものを縫いつける、レザーなどを貼り付ける、目を深く引き窪めて
鼻は何もしない場合など、様々な方法がある。
綴じ付け方
・足・手・耳などは、それぞれ胴体に綴じ付けておく
・顔は、胴体の上に重ねて綴じ付ける。あごができます。
(2)綿入れの注意点
・縫いあがったものを裏返し、縫い上がりよりも少し小さめに化繊綿を薄く平らに延ばし、裏
の割れ目より入れる。割り箸・ピンセットなどを使うと入れやすい。綿を入れた切り口は縫
い合わせておく。
(3)その他
・名札付け
縫いあげ、綿を入れた頭や手や足などのパーツを合体させ、つないでまとめていく段階
でそれぞれ該当のぺージ数を記入した名札を付けておくと、仕上げまでに紛失したり、間
違いが少なくなります。
D 貼り方
(1)絵の貼り方
絵は原則として右ぺージにおさめる。やむを得ないときは左のぺージも使う。これは、左右
のページに絵があると傷みやすいためです。
左ぺージには、絵を貼り付ける前に、あらかじめ文章を墨字で記入し、点字を貼っておく。
絵は、貼り付けるものの中心に木工用ボンドをつけ、台紙に貼る。端までボンドをつけると
はみ出てくる。あちらこちらに落とさないこと。
絵は、右ページの左端から最低1.5センチあけ(のりしろ分)下の端から2から3センチのと
ころに一定の高さに貼り付ける。
(3)貼り方の注意点
ボンドで貼り付けてしまう前に、念入りな点検をする。文章と絵をよく確かめて順序を間違え
ないようにする。複数の人が必ず確認すること。
重なっている部分は貼り付けない。 足・耳・鼻などは、貼り付けない。
胴体に綴じ付けてあるので胴体にボンドをしっかり付ける。
手前を基準にして、左から右への手の動きを考えて、流れをつくる。
登場人物の位置はページが変わっても下端からの高さが同じか確かめる。
台紙のまん中に貼ると宙に浮いたように理解される。
(1)表紙
・保管したり持ち運びの際に、他の本とこすれ、傷み易いので、絵は作らなくてよい。
・原本の表紙に書いてある文字(作者・出版社等)は、すべて点字と墨字で書く。書名はひも
で書く(縫い付ける。) ひもの裏の始末のために、一枚全部裏打ちをする。
・透明シートに点字で四角の囲み枠を打ち、その中に書名・作者・出版社をまとめて打ち、貼
り付ける。
(2)裏表紙
・最後のページは絵のない台紙を一枚つける。このページに、奥付を点字・墨字で書く。
・古いさわる絵本の台紙を変えたり、作り直して貼り替えた場合は修復とし、奧付に追加す
る。
・奥付として,、次の項目を四角の囲み枠の中に、墨字で書き、透明シートに点字で同じもの.
を打ち上に貼る。
原本の 書名 、 著者、画家 、 発行所 、 出版年 、 製作者(グループ名)、製作者名、
修復の場合は修復者名、 点訳者、 制作年月日、 修復年月日、
(1)点字についての注意
・シートは押しつけられるので、磨滅しにくい、かたいものを使います。 墨字が多いとき、点字と
重なるので、透明なシートを使います。
シートを貼る時、ページが変わっても同じ位置にあると読み手が見つけやすいので、手前(下
端)から一定距離(3センチ)に、シートの下端がくるようにする。
同じページにいくつも登場人物があり紛らわしい場合は、登場人物の足下に個々に点字を
つけておいてもよいでしょう。
・墨字で書いたものは、全て点字で透明シートに打ちます。
・透明シートは、ページ全部の文章を一枚のシートに打ちます。一行ごとに切り離さない。
1枚のシートに入り切らない場合は、隙間なく2枚目を続ける。
・透明シートは、四隅を丸く切り落として貼る。
(2)墨字の書き方の注意
・墨字は、台紙の上端から2センチ下がったところから書きはじめる。
・8ミリ四方〜2センチ四方のマスのなかへ、 ゴチック体のように端から端まで同じ太さで濃く
字を書く。
・ページごとに字の大きさを変えない。
・糊付のラベルシールに28ポイントで印刷したものを貼り付けても良い。
製本の方法は、次の方法をとります。
・本の厚さは、8センチくらいまでに納めます。あまり厚いと読みにくいし、持ち運びにも不便で
す。
・3〜6センチの 「まち」 を作っておき、まん中に折れを入れておく。
台紙2枚をつき合わせにおき、上に 「まち」 をボンドでつける。
厚みを出すために発泡スチロールの薄いものを挟むとよい。
H 仕上げ
・下貼り 白い布か製本用テープで本の背をに糊づけする。寸法は、縦は、台紙の縦の長さ、
横は、表紙に2〜2.5a背布からはみ出さない寸法
・ 背布は、幅16センチ縦は、絵本台紙の縦寸法に2センチ加える。上・下、左右端は、
裏へ1a折り返しておく、書名を絵本の幅中心にステッチする。
表紙と裏表紙(約3センチ3センチ)にのみしっかり糊つけをする。
T 著作権について
元にする絵本がある場合は、出版社か著者に著作権の許諾を受けておく必要があります。
製作に入る前に、出来上がりの形・使用目的・製作部数・製作者の自己紹介などを記して、
出版社に返信用封筒をいれて尋ねてみてください。
以上がこれまで、一冊できあがる度に、視覚障害の子ども達にさわってもらい、これはだめ
これは良いと充分吟味し、改良し製作してきた中で、たどり着いたさわる絵本の作り方です。
まだまだ、定義づけることがむつかしく、理解しにくいことも多いと思います。元にする絵本に
よって、いろいろ注意しなければならない事が多くあります。
具体的な作品の作り方を記したいと思いますが、しばらくかかりそうです。
小西まで連絡くださると、ご希望によって、講座を開いています。5から8回で1冊作れます。
初めてさわる絵本化するときは、常に創意工夫が要求されます。見えないから分からない
などと言われることがないよう、一つでも不可能を可能にして、楽しめる絵本を作っていきた
いものです。
大切なことは、まず原則を守って作ってみること。そして、できあがったら必ず点字を確認
し、次に絵と文章に矛盾がないかを確認します。絵本ができあがると、視覚障害の子どもと
一緒にお話を読み、手をとって絵の説明をしながらさわらせてあげ、絵本の楽しみが十分伝
えられているか、その本の良し悪しを、自分の目で知ることです。目が見えるがために、わか
ったつもりでも思わぬ失敗をすることがあります。一緒に読むという経験の積み重ねが、作り
手に、見えないという感覚を養わせることになります。そうなって初めて、よりわかりやすく、楽
しいさわる絵本を作ることができるでしょう。創造力、想像力、応用力をフルに活用し製作に
あたってください。