If You Could See Me Now(Tadd Dameron)

sarah vaughan タッド・ダメロンがサラ・ヴォーンのために書き下ろしたと言われるバラード。AABA32小節でA♭△。歌詞は「もしあなたが今の私を見るなら、いかに私が落ち込んでいるか一目でわかるでしょう。今でもあなたを愛していることがわかってくれるはず。」という内容で、恋人と別れたがいまだに忘れられない気持ちを、英語特有の「仮定法」に託して歌った失恋の曲。

歌詞のラストの“I think you would be mine again, if you could see me now. ”(「もしあなたが今の私を見れば、再び私のもとに戻ってくれるでしょう。」)というフレーズは、「仮定法」の裏の意味として「現実には、その人とはもう会うことはないし、私の元に戻ってくることもない」ということを暗示しています。そんな現実を前にしながらも、この曲の主人公が、「偶然会うことがあれば」と仮定して想いを巡らせ、「再び私のもとに戻ってくれるでしょう」と結論づけるというところに、なんとも言えないせつなさがあり、この歌詞の魅力になっていると思います。

この曲を演奏する際には、「昔の恋人と偶然会う」という甘美な「仮定の世界」を、いかに浮き立たせて表出するか、がポイントになるかと思います。

さて、この曲の魅力は、上述の歌詞だけでなく、コード進行、メロディの流れがユニークかつ綺麗というところにあります。さらに、Tommy Flanagan氏、寺井師匠によるアレンジ(構成)がこの曲をより一層引き立てています。テーマでの左手の動きにも注目です。曲そのものの魅力とアレンジの秀逸さから、個人的にジャズのバラードの中でもっとも好きと言ってもいい曲です。自分ももっとうまく弾きこなせるようになりたいし、他の生徒さんにもぜひぜひチャレンジしていただきたいと思います。

寺井師匠

<参考CD>

『Send In The Clowns』Sarah Vaughan and The Count Basie Orchestra,1981

『Flanagania』寺井尚之トリオ,1994

<『Flanagania』での寺井トリオの構成>


・イントロ 
・テーマ 前半16小節はピアノ・ルバート。サビからベース、ドラムス入る。
・前半16小節 ベース・アドリブ、 後半16小節 ピアノ・アドリブ
・2nd Riff 4小節、返し4小節(倍テン) 2nd Riff 4小節、返し4小節(倍テン)
 サビ8小節 ピアノ・アドリブ(サビの頭にベースとの掛け合い、倍テン) 
25小節目からラストテーマ
・エンディング

投稿者:むなぞう(2005.4.17)

師匠コメント

参考CDについて、T.FのLiveが何よりやねんけど・・・。 2nd RiffはS.Vaughanのフレーズを基に、T.Fが作った物です。