企業不祥事を起こした人が反社会的性向を帯びた人であるとは思わない。

生活者としての彼は善良な市民であり、遵法精神も持ち合わせていると思う。

ところが組織の中に入ると組織の論理に支配され、
不承不承ながら犯罪行為に手を染めてしまうのである。

個人が個人の道徳規範により自らを律することを困難にするのは集団圧力である。
個人が私腹を肥やすために違法行為をするのではなく、
組織のために良かれと思って非倫理的行動をしてしまうのである。
組織の論理は組織のメンバーとしての個人の行動に多大な影響を与える。

倫理的行動をするという規範が組織のメンバーに受け入れられなければ
規則は有名無実化する。
経営の観点からすると、規則を作るだけでなく規範を内面化することが重要である。


不祥事の発生が明るみに出た企業で、再度の不祥事が発生することがある。
これは不祥事に直接関わった担当者だけをトカゲのしっぽ切りのように処罰するだけで
お茶を濁したためであると考えられる。

つまり、企業倫理推進のため倫理を重視する組織文化に転換していく
不断の努力を怠り、不祥事の温床は残したまま、
不祥事の直接の担当者だけに罰則を与えているため、
不祥事が一度ならず発生するのである。

企業倫理推進体制構築に向けて倫理コードとして文書を作成し、
それを定着させるための組織作りをすることが肝要である。